宅建試験過去問題 平成26年試験 問6(改題)

問6

Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に契約不適合があった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. Cは、売買契約の締結の際、本件建物に欠陥があることにつき契約で合意していた場合であっても、不適合の存在を知ってから1年以内であれば、Aに対して売買契約に基づく担保責任を追及することができる。
  2. Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう契約不適合がある場合には、当該契約不適合によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。
  3. CがBに対して本件建物の契約不適合に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが契約不適合の存在に気付いてから1年以内である。
  4. 本件建物に存在している契約不適合のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でも、AはBとの契約を一方的に解除することができない。

正解 2

問題難易度
肢112.1%
肢261.4%
肢315.4%
肢411.1%

解説

  1. 誤り。売主の担保責任の追及には買主の主観的要件(善意・無過失)は要求されませんが、欠陥の内容が示されて合意した場合には契約不適合とはならないので、買主Cは売主Aに対して担保責任を追及することはできません(民法562条1項)。
    引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
  2. [正しい]。建物の設計者、施行者及び工事監視者は、契約関係にない居住者などの建物利用者、隣人、通行人に対しても基本的な安全性が欠けることがないように注意すべき義務があるとされています。この義務を怠ったことより生じた建物の基本的な安全性の欠如により、居住者等が損害を被った場合には、居住者等は建物の設計者、施行者及び工事監視者に対して、不法行為責任に基づく損害賠償請求ができます(最判平19.7.6)。
    よって、損害を被った買主Cは、特段の事情がない限り、建築をしたBに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できます。
    建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い,これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う。
  3. 誤り。本肢は、不法行為に基づく損害賠償請求です。よって、行使期間は契約不適合の存在に気付いてから1年以内ではなく、損害及び加害者を知ったときから3年以内となります(民法724条)。
    不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
    一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
    二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
  4. 誤り。旧民法では、請負契約の目的物が建物や土地工作物の場合、当該物件が完成した後では目的を達成することができない場合でも解除をすることはできないとされていました(※損害賠償請求はできました)。これは、建物を取り壊すのは非常に不経済であるからです。
    民法改正によりこの規定は削除されたため、建物や工作物であってもその欠陥が契約及び社会通念において軽微でない場合には契約解除(催告解除・無催告解除)できることとなりました(民法541条、民法542条)。
したがって正しい記述は[2]です。