宅建試験過去問題 平成18年試験 問6(改題)

問6

AがBに対して建物の建築工事を代金3,000万円で注文し、Bがこれを完成させた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. 請負契約の目的物たる建物に契約不適合がある場合、目的物の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、目的物の追完請求を請求しなければならない。
  2. 請負契約の目的物たる建物に重大な契約不適合があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、Aは当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
  3. 請負契約の目的物たる建物に契約不適合があり、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合でも、Aは原則として請負契約を解除することができない。
  4. 請負契約の目的物たる建物の契約不適合について、Bが担保責任を負わない旨の特約をした場合には、Aは当該建物の契約不適合についてBの責任を一切追及することができなくなる。

正解 2

問題難易度
肢111.5%
肢274.4%
肢37.3%
肢46.8%

解説

  1. 誤り。目的物に契約不適合があった場合、売主に対して追完請求、追完請求の催告後の代金減額請求、契約解除、損害賠償請求ができます。契約不適合に対する追完請求と損害賠償請求は同時にできます(民法562条1項民法564条)。損害賠償請求前に追完請求をしなければならないわけではありません。
    引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
    前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
    Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車のエンジンに契約の内容に適合しない欠陥があることが判明した場合、BはAに対して、甲自動車の修理を請求することができる。R3⑩-7-1
    甲土地の実際の面積が本件契約の売買代金の基礎とした面積より少なかった場合、Bはそのことを知った時から2年以内にその旨をAに通知しなければ、代金の減額を請求することができない。R2⑫-7-1
    Cは、売買契約において本件建物に欠陥があることについて合意していた場合であっても、その欠陥の存在を知ってから1年以内にその旨をAに通知すれば、Aに対して売買契約に基づく担保責任を追及することができる。H26-6-1
  2. [正しい]。建物に重大な契約不適合があり、建替えざるを得ないときは、建替えに要する費用相当額の損害賠償請求を行うことが可能です(最判平14.9.24)。
    建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
    本件契約の目的物たる建物に重大な契約不適合があるためこれを建て替えざるを得ない場合には、AはBに対して当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。R1-8-1
  3. 誤り。目的物の契約不適合が軽微でないときは契約解除することができます(民法541条)。旧民法の建物や工作物の請負については契約解除できないという規定は削除されました。
    当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
    売買代金を受領したCが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示したとしても、Bは、Cに対して相当の期間を定めた催告をしなければ、本件契約を解除することができない。R6-4-1
    Bが引渡しを受けた甲自動車が故障を起こしたときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。R3⑩-7-3
    債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。R2⑩-3-3
    ①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるが、②の契約については、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することはない。R2⑩-9-4
    建物の構造耐力上主要な部分の契約不適合については、契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるか否かにかかわらず、Bは契約不適合を理由に売買契約を解除することができる。R1-3-2
    本件建物に存在している契約不適合のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でも、AはBとの契約を一方的に解除することができない。H26-6-4
    売買の目的物である新築建物に、建て替えざるを得ないような重大な瑕疵があって契約の目的を達成できない場合には、買主は売買契約を解除することができる。H23-9-2
    Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。H18-8-2
    Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは、その欠陥が契約及び取引の社会通念に照らして軽微でないときに限られる。H15-10-2
    Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。H14-8-1
    Bは、この不適合が売買契約及び社会通念に照らして軽微でない場合に限り、この売買契約を解除できる。H14-9-4
  4. 誤り。担保責任を負わない特約も可能ですが、請負人が知って告げなかったなど一定の事実がある場合は責任追及が可能です(民法572条)。
    売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
    Bが当該契約不適合の存在を建物引渡しから1年が経過した時に知った場合、当該契約不適合の存在を知った時から2年後にその旨をAに通知しても、BはAに対して担保責任を追及することができる。R1-3-1
    請負人が担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。H29-7-4
    売買契約に、契約不適合についてのAの担保責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、Aが知りながらBに告げなかった契約不適合については、Aは担保責任を負わなければならない。H19-11-1
したがって正しい記述は[2]です。