宅建試験過去問題 平成14年試験 問8
問8
Aは、A所有の土地を、Bに対し、1億円で売却する契約を締結し、手付金として1,000万円を受領した。Aは、決済日において、登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供したが、Bが、土地の値下がりを理由に残代金を支払わなかったので、登記及び引渡しはしなかった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。- Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。
- Aは、この売買契約を解除するとともに、Bに対し、売買契約締結後解除されるまでの土地の値下がりによる損害を理由として、賠償請求できる。
- Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合で、Cがやはり土地の値下がりを理由としてBに代金の支払をしないとき、Bはこれを理由として、AB間の売買契約を解除することはできない。
- Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合、Aは、AB間の売買契約を解除しても、Cのこの土地を取得する権利を害することはできない。
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正解 4
問題難易度
肢19.1%
肢219.9%
肢318.3%
肢452.7%
肢219.9%
肢318.3%
肢452.7%
分野
科目:A - 権利関係細目:8 - 売買契約
解説
- 正しい。債務不履行があった場合の契約解除は「できる」というだけであって、必ずしなければならないわけではありません(民法541条)。よって、売買契約を解除せず、Bに対し、引き続き残代金の支払を請求し続ける選択も可能です。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
- 正しい。契約解除と損賠償請求は別個の権利です。したがって、債務不履行による契約解除が行われた場合でも、損害賠償請求をすることはできます(民法545条4項、民法415条)。よって、契約解除時に土地が値下がりしていた場合、Aは土地の値下がりによる填補賠償をBに対して請求できます。
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
- 正しい。BC間の転売契約とAB間の売買契約は別のものです。Aは自己の債務の履行を提供しているので、BはCの代金不払いを理由に、AB間の売買契約を債務不履行により解除することはできません。手付が交付されていますが、Aが契約の履行に着手した後なので手付解除もできません。
- [誤り]。売買契約の解除をすることにより、解除前に取引関係に入った第三者(解除前の第三者)の利益を害することができません。ただし、この解除前の第三者として保護されるためには登記などの対抗要件を得ていることが必要とされています(民法545条1項)。本肢では、登記はAからBに移転しておらず、Cも登記を備えていないので、CはBからの移転登記を受けることができないので第三者として保護される要件を満たしていません。よって、AはCに対して所有権を主張することができます(最判昭33.6.14)。
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡つて合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかつた丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない
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