宅建試験過去問題 平成26年試験 問8(改題)

問8

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. 不法行為による損害賠償請求権の期間の制限を定める民法第724条第1号における、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。
  2. 不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。
  3. 不法占拠により日々発生する損害については、加害行為が終わった時から一括して消滅時効が進行し、日々発生する損害を知った時から別個に消滅時効が進行することはない。
  4. 不法行為の加害者が海外に在住している間は、民法第724条第2号の20年の時効期間は進行しない。

正解 1

問題難易度
肢168.4%
肢211.2%
肢35.6%
肢414.8%

解説

  1. [正しい]。不法行為による損害賠償請求権の時効の起算点となる「被害者が損害を知った時」とは、被害者が損害発生の可能性を知った時ではなく、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいいます(最判平14.1.29)。
    民法724条にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。
  2. 誤り。不法行為によって生じた債権の消滅時効は、損害及び加害者を知ったときから3年、不法行為の発生から20年です(民法724条)。通常の債権は知ったときから5年、行使できるときから10年で消滅時効となるので違いに注意しましょう。
    不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
    一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
    二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
    本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。R3⑩-8-3
    人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。R2⑫-1-4
    信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。H28-9-1
    信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。H28-9-2
    CがBに対して本件建物の契約不適合に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが契約不適合の存在に気付いてから1年以内である。H26-6-3
    不法行為による損害賠償の請求権の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。H19-5-4
    Dが、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。H17-11-4
    Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。H12-8-3
  3. 誤り。継続的・累計的に発生する損害については、原則として日々新たな損害が発生するものとして、被害者が個々の損害が発生したことを知った時から別個に消滅時効が進行するというのが判例の立場です(大判昭15.12.14)。
    不法占拠により日々発生する損害については,加害行為がやんだ時から消滅時効が進行するのではなく,それぞれの損害を知った時から別個に消滅時効が進行する
  4. 誤り。民事事件では、海外にいる間も時効の進行は停止しません。よって、不法行為の加害者が海外に在住している間も、不法行為責任の時効期間は進行します。
    【参考】
    刑事事件では公訴時効があり、犯人が海外にいる期間は時効の進行が停止します。
したがって正しい記述は[1]です。