宅建試験過去問題 令和3年10月試験 問7

問7

Aを売主、Bを買主として、A所有の甲自動車を50万円で売却する契約(以下この問において「本件契約」という。)が令和6年7月1日に締結された場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
  1. Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車のエンジンに契約の内容に適合しない欠陥があることが判明した場合、BはAに対して、甲自動車の修理を請求することができる。
  2. Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車に契約の内容に適合しない修理不能な損傷があることが判明した場合、BはAに対して、売買代金の減額を請求することができる。
  3. Bが引渡しを受けた甲自動車が故障を起こしたときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。
  4. 甲自動車について、第三者CがA所有ではなくC所有の自動車であると主張しており、Bが所有権を取得できないおそれがある場合、Aが相当の担保を供したときを除き、BはAに対して、売買代金の支払を拒絶することができる。

正解 3

問題難易度
肢12.9%
肢24.7%
肢383.2%
肢49.2%

解説

  1. 正しい。売買契約で引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約内容に適合しないときは、買主は、売主に対して、売買目的物の修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し等の履行の追完を請求することができます(民法562条1項)。本肢の欠陥は品質に関する契約不適合なので、BはAに対して、自動車の修理を請求することができます。
    引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
    甲土地の実際の面積が本件契約の売買代金の基礎とした面積より少なかった場合、Bはそのことを知った時から2年以内にその旨をAに通知しなければ、代金の減額を請求することができない。R2⑫-7-1
    Cは、売買契約において本件建物に欠陥があることについて合意していた場合であっても、その欠陥の存在を知ってから1年以内にその旨をAに通知すれば、Aに対して売買契約に基づく担保責任を追及することができる。H26-6-1
    請負契約の目的物たる建物に契約不適合がある場合、目的物の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、目的物の追完請求を請求しなければならない。H18-6-1
  2. 正しい。代金減額請求は、相当な期間を定めて履行の追完を催告した後でなければ行うことができないのが原則です。しかし、以下の4つのいずれかに該当するときには上記の催告をすることなく、直ちに代金減額請求を行うことができます(民法563条)。
    1. 履行の追完が不能であるとき
    2. 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
    3. 履行の追完がないまま、契約の目的を達成するために必要な特定の日時または一定の期間を過ぎたとき
    4. 催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき
    本肢は、特定物である自動車が修理不能なので、①の履行の追完が不能であるときに該当します。したがって、BはAに対して、代金減額を請求することができます。
  3. [誤り]。契約の解除は、原則として、その不適合が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微ではなく、相当な期間を定めて履行の催告をした後でなければすることができません(民法541条)。故障が軽微ではなく修理が不能であれば無催告解除が可能ですが、修理が可能である場合には、履行を催告しなければ契約を解除することはできません。
    当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
    売買代金を受領したCが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示したとしても、Bは、Cに対して相当の期間を定めた催告をしなければ、本件契約を解除することができない。R6-4-1
    債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。R2⑩-3-3
    ①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるが、②の契約については、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することはない。R2⑩-9-4
    建物の構造耐力上主要な部分の契約不適合については、契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるか否かにかかわらず、Bは契約不適合を理由に売買契約を解除することができる。R1-3-2
    本件建物に存在している契約不適合のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でも、AはBとの契約を一方的に解除することができない。H26-6-4
    売買の目的物である新築建物に、建て替えざるを得ないような重大な瑕疵があって契約の目的を達成できない場合には、買主は売買契約を解除することができる。H23-9-2
    請負契約の目的物たる建物に契約不適合があり、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合でも、Aは原則として請負契約を解除することができない。H18-6-3
    Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。H18-8-2
    Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは、その欠陥が契約及び取引の社会通念に照らして軽微でないときに限られる。H15-10-2
    Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。H14-8-1
    Bは、この不適合が売買契約及び社会通念に照らして軽微でない場合に限り、この売買契約を解除できる。H14-9-4
  4. 正しい。売買契約の買主が売買目的の権利を取得することができない、または失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部または一部の支払を拒むことができます。ただし、売主が相当の担保を提供している場合は除かれます(民法576条)。したがって、買主Bは、売主Aが相当の担保を供したときを除き、売買代金の支払を拒絶することができます。
    売買の目的について権利を主張する者があることその他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
したがって誤っている記述は[3]です。