宅建試験過去問題 平成12年試験 問8
問8
Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。- Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でもAから過失相殺の主張がなければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。
- 不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。
- Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。
- Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、その時以後の遅延損害金を請求することができる。
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正解 2
問題難易度
肢19.7%
肢257.0%
肢313.4%
肢419.9%
肢257.0%
肢313.4%
肢419.9%
分野
科目:1 - 権利関係細目:11 - 不法行為・事務管理
解説
- 誤り。不法行為につき双方から過失相殺の主張がなくても、裁判所は、過失を考慮した賠償金額を決めることができます(民法722条1項最判昭41.6.21)。よって、裁判所はAから過失相殺の主張がなくても、被害者Bの過失を考慮し、賠償金額を減額することができます。本肢は「主張がなければ減額できない」としているので誤りです。
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
不法行為を理由とする損害賠償請求訴訟において、被害者に過失があると認めるときには、裁判所は、当事者からの主張を要しないで、過失相殺をすることができる。
- [正しい]。共同不法行為があった場合、不法行為に関与した各自が被害者に対して連帯して損害賠償責任を負います(民法719条1項)。連帯債務では、多数の債務者が同一内容の給付について全部を履行すべき義務を負いますから、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができます(民法436条)。
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
Aは、Cに対して事故によって受けたCの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができる。(H25-9-1)事故によって損害を受けたCは、AとBに対して損害賠償を請求することはできるが、Dに対して損害賠償を請求することはできない。(H25-9-3)加害者数人が、共同不法行為として民法第719条により各自連帯して損害賠償の責任を負う場合、その1人に対する履行の請求は、他の加害者に対してはその効力を有しない。(H19-5-3)Aは、Eに対するBとDの加害割合が6対4である場合は、Eの損害全額の賠償請求に対して、損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。(H14-11-1) - 誤り。不法行為による損害賠償請求権は、その被害を知った時から3年、その行為の時から20年で時効により消滅します(民法724条)。本肢は「知った時から1年間」としているので誤りです。
※人の生命や身体を害する不法行為だった場合は知った時から5年になりますが、本肢は建物の滅失ですので3年です。不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。(R3⑩-8-3)人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。(R2⑫-1-4)信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。(H28-9-1)信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。(H28-9-2)CがBに対して本件建物の契約不適合に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが契約不適合の存在に気付いてから1年以内である。(H26-6-3)不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。(H26-8-2)不法行為による損害賠償の請求権の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。(H19-5-4)Dが、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。(H17-11-4) - 誤り。期限の定めのない債務は履行の請求を受けたときから履行遅滞に陥るというのが民法の原則です(民法412条3項)。しかし、不法行為による損害賠償債務に関しては、何の催告を要せずに、損害の発生と同時に履行遅滞に陥るというのが判例法理です(最判昭37.9.4)。
よって、Aは損害発生時点から遅滞の責任(遅延損害金の支払い)を負うこととなります。本肢は「履行の請求があった時から」としているので誤りです。債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきである。
不法行為による損害賠償の支払債務は、催告を待たず、損害発生と同時に遅滞に陥るので、その時以降完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければならない。(H19-5-1)
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