8種制限(全72問中43問目)

No.43

自らが売主である宅地建物取引業者Aと、宅地建物取引業者でないBとの間での売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
平成21年試験 問37
  1. Aは、Bとの間における建物の売買契約(代金2,000万円)の締結に当たり、手付金として100万円の受領を予定していた。この場合において、損害賠償の予定額を定めるときは、300万円を超えてはならない。
  2. AとBが締結した建物の売買契約において、Bが手付金の放棄による契約の解除ができる期限について、金融機関からBの住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをした。この場合において、Aは、自らが契約の履行に着手する前であれば、当該承認が得られた後は、Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことができる。
  3. Aは、喫茶店でBから宅地の買受けの申込みを受けたことから、翌日、前日と同じ喫茶店で当該宅地の売買契約を締結し、代金全部の支払を受けた。その4日後に、Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる当該契約を解除する旨の書面による通知を受けた場合、Aは、当該宅地をBに引き渡していないときは、代金の全部が支払われたことを理由に当該解除を拒むことはできない。
  4. Aは、Bとの間で宅地の割賦販売の契約(代金3,000万円)を締結し、当該宅地を引き渡した。この場合において、Aは、Bから1,500万円の割賦金の支払を受けるまでに、当該宅地に係る所有権の移転登記をしなければならない。

正解 3

問題難易度
肢17.8%
肢211.1%
肢370.5%
肢410.6%

解説

  1. 誤り。宅建業者が自ら売主となる場合には、手付とは別枠で、代金の2割を限度として損害賠償の予定額や違約金を定めることが可能です。本件の売買代金は2,000万円なので、手付400万円、損害賠償の予定額400万円が限度となります(宅建業法38条1項)。本肢は、損害賠償の予定額が「300万円を超えてはならない」としていますが、300万を超えても400万円以下であれば適法なので誤りです。
    ※もし本件の手付が違約手付であれば、損害賠償の予定額は300万円が限度となりますが、本肢ではそのような条件設定はありません。
    宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。
  2. 誤り。一般的に考えて「住宅ローンの承認」→「売主が契約の履行に着手」となるので、手付金の扱いについて宅建業法の規定よりも買主側に不利な定めとなります。宅建業法の定めよりも買主に不利な特約は無効となります(宅建業法39条3項)。この場合、民法の規定に従い、買主が契約解除をできるのは「相手方が契約の履行に着手するまで」となるため、契約の履行に着手していないAはBからの契約解除を拒むことはできません。
    前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。
  3. [正しい]。次の条件のいずれかを満たす場合、クーリング・オフによる契約解除はできません。逆を言えば、どれにも該当しなければクーリング・オフできるということです(宅建業法37条の2)。
    1. 宅地建物取引業者の事務所等で買受けの申込みまたは売買契約(事務所等以外の場所で買受けの申込みをした場合を除く)をしている
    2. クーリング・オフについて書面で告げられた日から起算して8日を経過している
    3. 物件の引渡しを受け、かつ、代金全額を支払っている
    4. 買主が宅地建物取引業者である
    本肢の場合、喫茶店で買受けの申込みを受けていることに加え、引渡しがなされていないため、クーリング・オフによる解除が可能です。
  4. 誤り。割賦販売の場合には、代金の3割を受領するまでに移転登記をする必要があります(宅建業法43条1項)。3,000万円の3割は900万円ですので、Aは900万円の支払いを受けるまでに移転登記をしなければなりません。
    宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合には、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡すまで(当該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けていない場合にあつては、代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けるまで)に、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。ただし、買主が、当該宅地又は建物につき所有権の登記をした後の代金債務について、これを担保するための抵当権若しくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限りでない。
したがって正しい記述は[3]です。