宅建試験過去問題 平成29年試験 問7(改題)

問7

請負契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. 請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。
  2. 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。
  3. 請負契約の目的物に契約不適合がある場合、注文者は、請負人から履行の追完に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。
  4. 請負人が担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。

正解 3

問題難易度
肢115.2%
肢213.4%
肢365.6%
肢45.8%

解説

  1. 正しい。請負人の責めに帰すべき事由によって請負契約が終了し、その残工事を注文者が費用を出して行った場合、判例によれば、注文者が請負人に対して損害賠償をできるのは、未施工部分に相当する請負代金を超える額に限られます(最判昭60.5.17)。
    例えば3,000万円で住宅建築の請負契約をして、その5割相当部分しか完成していない(未施工部分1,500万円)状態で請負契約が終了したとします。その後、注文者が残り5割の部分を自費2,000万円出して完成させた場合には、請負人への損害賠償金額は「2,000万円-1,500万円=500万円」に限られるということになります。
    請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる。
  2. 正しい。注文者の責に帰すべき事由によって履行ができなくなった場合、危険負担の規定に則り請負人は請負代金全額を請求することが可能です。しかし、債務を免れたことによる利益は注文者に償還しなければなりません(民法536条2項)。債務を免れたことによる利益とは、仮に建築工事では残工事にかかる労力や材料費等の価額等です。
    債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
    Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。R2⑩-5-1
    甲建物が同年9月15日時点でBの責に帰すべき火災により滅失した場合、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。H19-10-3
  3. [誤り]。契約不適合がある場合の損害賠償義務は同時履行の関係にあり、注文者の報酬支払いと同時にする必要があります(民法533条)。よって、請負人から履行の追完に代わる損害賠償を受けていない場合は、報酬全額を支払う必要はありません(最判平9.2.14)。
    双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
    請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。
    Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。R1-7-4
    Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。H29-5-1
    Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。H21-8-3
    Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。H18-8-3
    動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。H15-9-1
  4. 正しい。担保責任は任意規定なので、担保責任を負わない旨の特約は有効です。しかし、知りながら告げなかった(請負人が悪意の)不適合については担保責任を負う必要があります(民法572条)。
    売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
    Bが当該契約不適合の存在を建物引渡しから1年が経過した時に知った場合、当該契約不適合の存在を知った時から2年後にその旨をAに通知しても、BはAに対して担保責任を追及することができる。R1-3-1
    売買契約に、契約不適合についてのAの担保責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、Aが知りながらBに告げなかった契約不適合については、Aは担保責任を負わなければならない。H19-11-1
    請負契約の目的物たる建物の契約不適合について、Bが担保責任を負わない旨の特約をした場合には、Aは当該建物の契約不適合についてBの責任を一切追及することができなくなる。H18-6-4
したがって誤っている記述は[3]です。