売買契約(全31問中23問目)
No.23
AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。平成18年試験 問8
- Bは、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。
- Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。
- Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。
- Bが、改めて代金債務を履行するとして、自分振出しの小切手をAの所に持参しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。
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正解 3
問題難易度
肢17.6%
肢26.4%
肢370.9%
肢415.1%
肢26.4%
肢370.9%
肢415.1%
分野
科目:1 - 権利関係細目:8 - 売買契約
解説
- 正しい。Aが履行の提供をしているにもかかわらず、代金債務の弁済を行わなかったBは、履行遅滞に陥ります。よって、Bは遅延損害金支払債務を負うこととなります(民法412条1項)。
債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
- 正しい。一度履行の提供をしているため、相当の期間を定めて履行を催告し、その間に相手方の履行がなければ契約を解除することができます(民法541条最判昭36.6.22)。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合、右契約を解除しようとする当事者の債務の履行の提供は、催告に指定された履行期日にこれをすれば足りる。
売買代金を受領したCが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示したとしても、Bは、Cに対して相当の期間を定めた催告をしなければ、本件契約を解除することができない。(R6-4-1)Bが引渡しを受けた甲自動車が故障を起こしたときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。(R3⑩-7-3)債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。(R2⑩-3-3)①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるが、②の契約については、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することはない。(R2⑩-9-4)建物の構造耐力上主要な部分の契約不適合については、契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるか否かにかかわらず、Bは契約不適合を理由に売買契約を解除することができる。(R1-3-2)本件建物に存在している契約不適合のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でも、AはBとの契約を一方的に解除することができない。(H26-6-4)売買の目的物である新築建物に、建て替えざるを得ないような重大な瑕疵があって契約の目的を達成できない場合には、買主は売買契約を解除することができる。(H23-9-2)請負契約の目的物たる建物に契約不適合があり、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合でも、Aは原則として請負契約を解除することができない。(H18-6-3)Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは、その欠陥が契約及び取引の社会通念に照らして軽微でないときに限られる。(H15-10-2)Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。(H14-8-1)Bは、この不適合が売買契約及び社会通念に照らして軽微でない場合に限り、この売買契約を解除できる。(H14-9-4) - [誤り]。双務取引の当事者には同時履行の抗弁権があります(民法533条)。代金弁済を受けるには所有権移転登記を行うことが必要となるため、移転登記と代金支払いの引換給付判決がなされます。
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
Bは、売買代金が支払い済みだったとしても、甲土地の所有権登記を備えなければ、Cに対して甲土地の引渡しを請求することはできない。(R6-4-3)請負人の報酬債権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該残債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。(R6-5-3)Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。(R1-7-4)Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。(H29-5-1)請負契約の目的物に契約不適合がある場合、注文者は、請負人から履行の追完に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。(H29-7-3)Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。(H21-8-3)動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。(H15-9-1) - 正しい。小切手等の有価証券による弁済でも有効となることがあります。しかし、自分振り出しの小切手は口座残高がなくても発行可能であり、不渡りになる可能性があるため、債務の本旨に従った弁済の提供と言えないことが判例で示されています(最判昭35.11.22)。
金銭債務を負担する者が弁済のため同額の小切手を提供しても、銀行の自己宛小切手または銀行の支払保証のある小切手等支払の確実なものでないときは、特別の意思表示または慣習がない限り、債務の本旨に従つたものとはいえない。
Aが、当該借賃を額面とするA振出しに係る小切手(銀行振出しではないもの)をBに提供した場合、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。(H17-7-3)
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