宅建試験過去問題 平成29年試験 問5(改題)

問5

Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。
  2. 当該自動車が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合、CはAに対しても、Bに対しても、契約不適合を担保すべき責任を追及することができる。
  3. 売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を現実に提供して売買契約を解除することができる。
  4. 売買契約締結時には当該自動車がAの所有物ではなく、Aの父親の所有物であったとしても、AC間の売買契約は有効に成立する。

正解 4

問題難易度
肢14.9%
肢28.8%
肢39.9%
肢476.4%

解説

  1. 誤り。通常は、売買目的物の引渡しと代金の支払いは同時履行の関係にあります。よって、本件の場合も同様に、Aから自動車の引き渡しを受ける際に代金を支払います(民法533条)。
    双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
    Bは、売買代金が支払い済みだったとしても、甲土地の所有権登記を備えなければ、Cに対して甲土地の引渡しを請求することはできない。R6-4-3
    請負人の報酬債権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該残債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。R6-5-3
    Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。R1-7-4
    請負契約の目的物に契約不適合がある場合、注文者は、請負人から履行の追完に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。H29-7-3
    Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。H21-8-3
    Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。H18-8-3
    動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。H15-9-1
  2. 誤り。契約不適合を担保すべき責任は売買契約の売主が負う責任です。よって、売買を媒介したBに対して追及することはできません(民法562条)。
    引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
  3. 誤り。手付解除は相手方が契約の履行に着手するまでに行わなくてはならないので、いつでも解除できるわけではありません。Cが契約の履行に着手した後は、Aから手付解除をすることができなくなります(民法557条1項)。
    買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
    ①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。R2⑩-9-1
    買主が、売主に対して手付金を支払っていた場合には、売主は、自らが売買契約の履行に着手していても、買主が履行に着手するまでは、手付金の倍額を買主に支払うことによって、売買契約を解除することができる。H17-9-4
    同年10月31日までにAが契約の履行に着手した場合には、手付が解約手付の性格を有していても、Bが履行に着手したかどうかにかかわらず、Aは、売買契約を解除できなくなる。H16-4-2
    Aが、売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は、Bが履行に着手していないときでも、Aは、本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。H12-7-2
    Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は、Bは、Aに対して、単に口頭で手付の額の倍額を提供することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。H12-7-4
  4. [正しい]。他人物売買であっても契約自体は有効に成立します(民法561条)。このとき、Aは父親の自動車の所有権を取得して、Cに移転する義務を負います。
    他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
    他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効であるが、当該他人がその売買契約を追認した場合にはその売買契約は有効となる。R6-1-4
    Bが購入した目的物が第三者Cの所有物であり、Aが売買契約締結時点でそのことを知らなかった場合には、Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる。R3⑫-4-3
    Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aの責めに帰すべき事由により、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができる。H28-6-1
    Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。H28-6-2
    甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。H21-10-3
    買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。H17-9-1
    Bが購入した土地の一部を第三者Dが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して追完請求をすることができる。H16-10-3
    Aが、B・Cに無断で、この建物を自己の所有としてDに売却した場合は、その売買契約は有効であるが、B・Cの持分については、他人の権利の売買となる。H13-1-1
したがって正しい記述は[4]です。