売買契約 (全22問中22問目)

No.22

買主Aと売主Bとの間で建物の売買契約を締結し、AはBに手付を交付したが、その手付は解約手付である旨約定した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
平成12年試験 問7
  1. 手付の額が売買代金の額に比べて僅(きん)少である場合には、本件約定は、効力を有しない。
  2. Aが、売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は、Bが履行に着手していないときでも、Aは、本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。
  3. Aが本件約定に基づき売買契約を解除した場合で、Aに債務不履行はなかったが、Bが手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、Bは、その損害全部の賠償を請求することができる。
  4. Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は、Bは、Aに対して、単に口頭で手付の額の倍額を提供することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。

正解 4

問題難易度
肢12.9%
肢26.4%
肢313.4%
肢477.3%

解説

  1. 誤り。手付の金額について法律上の制限はなく、当事者間で合意があれば金額がいくら少なくても有効な解約手付となります。判例では代金900円に対して1%にも満たない手付金6円を解約手付と認めた例(大判大10.6.21)、265万円に対して3,000円の手付金を解約手付と認めた例(東京地裁昭41.5.18)があります。
    手附としての金額が寡少であり、容易に契約解除できてしまうために契約の効力を薄弱にしてしまう結果を来したとしても、それは法の認めるところであって手附の性質に反するものではない。
  2. 誤り。解約手付による契約解除が可能なのは「相手方が契約の履行に着手するまで」です(民法557条1項)。Aから手付解除を申し入れるには、Bが契約の履行に着手していなければ足り、A自身が契約の履行に着手しているかどうかは関係ありません。よって、AはBが契約の履行に着手していないときであれば、手付を放棄することにより契約解除ができます。
    買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
  3. 誤り。手付解除が行われた場合、買主・売主いずれも相手に損害賠償請求をすることはできません(民法557条2項民法545条4項)。
    第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。
    解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
  4. [正しい]。売主側から手付解除を申し入れる場合は、買主に対して、手付の倍額を現実に提供しなければなりません。単に口頭で手付の額の倍額を提供する旨を告げて、受領を催告するだけでは足りません(民法557条1項)。この「現実に提供」という要件は判定法理(最判平6.3.22)でしたが民法改正により明文化されました。
    買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
    売主が手付けの倍額を償還して売買契約を解除するためには、買主に対して右額の現実の提供をすることを要する。
したがって正しい記述は[4]です。