売買契約(全29問中22問目)

No.22

共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について、令和6年9月1日に売買代金3,000万円(うち、手付金200万円は同年9月1日に、残代金は同年10月31日支払う。)とする売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成16年試験 問4
  1. 本件売買契約に正当な利益を有しないCは、同年10月31日を経過すれば、Bの意思に反しても残代金をAに対して支払うことができる。
  2. 同年10月31日までにAが契約の履行に着手した場合には、手付が解約手付の性格を有していても、Bが履行に着手したかどうかにかかわらず、Aは、売買契約を解除できなくなる。
  3. Bの債務不履行によりAが売買契約を解除する場合、手付金相当額を損害賠償の予定とする旨を売買契約で定めていた場合には、特約がない限り、Aの損害が200万円を超えていても、Aは手付金相当額以上に損害賠償請求はできない。
  4. Aが残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であっても、Bは同年10月31日には2,800万円をAに対して現実に提供しなければ、Bも履行遅滞の責任を負わなければならない。

正解 3

問題難易度
肢114.5%
肢214.5%
肢356.0%
肢415.0%

解説

  1. 誤り。債務の弁済は、第三者でも行うことができますが、正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することはできません(民法474条1項・2項)。よって、CはBの意思に反して弁済することはできません。
    債務の弁済は、第三者もすることができる。
    2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
  2. 誤り。手付解除は相手方が契約の履行に着手するまでに行う必要があります(民法557条1項)。よって、Aが契約の履行に着手した後であっても、相手方であるBが契約の履行に着手していなければ、Aから手付解除を申し入れることは可能です。
    買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
    ①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。R2⑩-9-1
    売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を現実に提供して売買契約を解除することができる。H29-5-3
    買主が、売主に対して手付金を支払っていた場合には、売主は、自らが売買契約の履行に着手していても、買主が履行に着手するまでは、手付金の倍額を買主に支払うことによって、売買契約を解除することができる。H17-9-4
    Aが、売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は、Bが履行に着手していないときでも、Aは、本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。H12-7-2
    Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は、Bは、Aに対して、単に口頭で手付の額の倍額を提供することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。H12-7-4
  3. [正しい]。損害賠償額の予定をした場合には、実際の損害が大きくても少なくても増減額を請求することはできません(大判大11.7.26)
    Aは、賠償請求に際して、Bの履行遅滞があったことを主張・立証すれば足り、損害の発生や損害額の主張・立証をする必要はない。H14-7-4
  4. 誤り。債権者が明確に受領を拒絶をしている場合、債務者は弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば履行遅滞の責任を免れます(民法493条)。この場合は催告で足り、現実に提供する必要はありません。
    弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
したがって正しい記述は[3]です。