宅建試験過去問題 平成26年試験 問33

問33

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として買主との間で建築工事完了前の建物を5,000万円で売買する契約をした場合において、宅地建物取引業法第41条第1項に規定する手付金等の保全措置(以下この問において「保全措置」という。)に関する次の記述のうち、同法に違反するものはどれか。
  1. Aは、宅地建物取引業者であるBと契約を締結し、保全措置を講じずに、Bから手付金として1,000万円を受領した。
  2. Aは、宅地建物取引業者でないCと契約を締結し、保全措置を講じた上でCから1,000万円の手付金を受領した。
  3. Aは、宅地建物取引業者でないDと契約を締結し、保全措置を講じることなくDから手付金100万円を受領した後、500万円の保全措置を講じた上で中間金500万円を受領した。
  4. Aは、宅地建物取引業者でないEと契約を締結し、Eから手付金100万円と中間金500万円を受領したが、既に当該建物についてAからEへの所有権移転の登記を完了していたため、保全措置を講じなかった。

正解 3

問題難易度
肢110.2%
肢210.8%
肢364.9%
肢414.1%

解説

  1. 違反しない。保全措置はいわゆる「8種制限」の一つであり、買主が宅地建物取引業者である場合は適用されません。本肢は、買主が宅地建物取引業者のため保存措置を講じなくても違反ではありません(宅建業法78条2項)。
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    第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。
    宅地建物取引業者は、自ら売主として、宅地建物取引業者である買主との間で、自ら所有しない造成前の宅地の売買契約を締結するためには、法第41条の規定による手付金等の保全措置を講じ、かつ、売主である宅地建物取引業者が当該宅地を取得する契約を締結しなければならない。R7-28-ウ
    Aは、宅地建物取引業者である買主Eとの間で建築工事完了前の建物を5,000万円で売却する契約を締結した場合、保全措置を講じずに、当該建物の引渡前に500万円を手付金として受領することができる。H25-40-3
    Aは、宅地建物取引業者であるBとの間で建築工事が完了した建物を1億円で販売する契約を締結し、法第41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じずに、当該建物の引渡し前に2,500万円を手付金として受領した。H20-41-4
    AはBと売買契約を締結し、代金の額の10分の3の金額を手付として受領した。H18-38-1
    Aは、自ら売主として行う造成済みの宅地の売買において、買主である宅地建物取引業者と、「Aは当該宅地の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を一切負わない」旨の特約を記載した売買契約を締結した。H18-41-3
    Aは、宅地建物取引業者であるBとの売買契約の締結に際して、当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を1,200万円とする特約を定めた。この特約は無効である。H17-43-1
    宅地建物取引業者である買主Dは、建物の物件の説明をAの事務所で受けた。後日、Aの事務所近くの喫茶店で買受けを申し込むとともに売買契約を締結した場合、Dは売買契約の解除はできる。H14-45-3
  2. 違反しない。宅地建物取引業者が自ら売主となり、宅地建物取引業者でない買主と売買契約を締結する場合に、代金の2割を超える手付を受け取ることはできません(宅建業法39条1項)。手付金1,000万円は代金のちょうど2割(5,000万円×20%=1,000万円)なので、保全措置を講じれば受領することができます。
    宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない。
    AB間で建物の売買契約を締結する場合において、Aは、あらかじめBの承諾を書面で得た場合に限り、売買代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができる。R3⑫-27-3
    Aは宅地建物取引業者であるが、Bは宅地建物取引業者ではない場合において、Aは、本件契約の締結に際して、500万円の手付を受領した。H30-29-3
    Aは、Bとの間における建物の売買契約の締結の際、原則として480万円を超える手付金を受領することができない。ただし、あらかじめBの承諾を得た場合に限り、720万円を限度として、480万円を超える手付金を受領することができる。H27-36-イ
    Aは、法第41条に定める手付金等の保全措置を講じた上で、Bから2,000万円を手付金として受領した。H21-39-4
    Aは、自ら売主となる建物(代金5,000万円)の売買に際し、あらかじめ買主の承諾を得た上で、代金の30%に当たる1,500万円の手付金を受領した。H21-40-3
    A社が自ら3,000万円の宅地の売主となる場合、手付金の保全措置を講じれば、宅地の引渡し前に手付金として900万円を受領することができる。H16-45-3
    Aは、Bとの間で建築工事が完了した1億円の新築マンションの売買契約を締結し、宅地建物取引業法第41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じたうえで、当該マンションの引渡し前に2,000万円を手付金として受領した。H15-38-2
    Aは、Bの承諾を得ている場合は、契約自由の原則に則り、購入代金の額の2/10を超える額の手付を受領できる。H14-40-1
  3. [違反する]。自ら売主となる工事完了前の物件では、代金の5%以下かつ1,000万円以下であるときを除き、手付金等の受領前に保全措置が必要です。手付金100万円は代金の5%(5,000万円×5%=250万円)以下なので、この段階では保全措置は不要です。しかし次の中間金500万円を受領すると基準額を超えますから、中間金を受領する前に、手付金と中間金を合わせた600万円について保全措置を講じる必要があります。500万円の保全措置では足りません。
  4. 違反しない。保全措置は、買主に所有権が移転するまでの期間に受け取る金銭を保護するために行う措置です。よって、買主が所有権の保存・移転登記を備えた後に受け取る金銭については、保全措置を講じる義務はありません。
したがって正しい記述は[3]です。