8種制限(全72問中8問目)

No.8

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではないBとの間で建物の売買契約を締結する場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
令和2年10月試験 問32
  1. AB間の建物の売買契約において、Bが当該契約の履行に着手した後においては、Aは、契約の締結に際してBから受領した手付金の倍額をBに現実に提供したとしても、契約を解除することはできない。
  2. AB間の建物の売買契約における「法第37条の2の規定に基づくクーリング・オフによる契約の解除の際に、当該契約の締結に際しAがBから受領した手付金は返還しない」旨の特約は有効である。
  3. AB間の建物の割賦販売の契約において、Bからの賦払金が当初設定していた支払期日までに支払われなかった場合、Aは直ちに賦払金の支払の遅滞を理由として当該契約を解除することができる。
  4. AB間で工事の完了前に当該工事に係る建物(代金5,000万円)の売買契約を締結する場合、Aは、法第41条に定める手付金等の保全措置を講じた後でなければ、Bから200万円の手付金を受領してはならない。

正解 1

問題難易度
肢176.8%
肢24.9%
肢37.8%
肢410.5%

解説

  1. [正しい]。手付による契約解除は、相手方が契約の履行に着手するまでにしなければなりません(宅建業法39条2項)。本肢では、買主Bが既に契約の履行に着手しているので、売主Aは倍額を現実に提供しても手付解除をすることはできません。
    宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
  2. 誤り。クーリング・オフによる契約解除があった場合、売主である宅地建物取引業者は買受けの申込みや契約締結の際に受領した手付金等を速やかに返還しなければなりません(宅建業法37条の2第3項)。この規定に反する特約で買主に不利な特約は無効となります(宅建業法37条の2第4項)。
    クーリング・オフを実行した際に手付金が戻ってこない特約は、明らかに買主に不利なので無効となります。
    申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
    前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
  3. 誤り。宅地建物取引業者が自ら売主となり、宅地建物取引業者でない買主とする割賦販売契約において、買主からの割賦金支払いが行われない場合には、30日以上の期間を定めて書面で支払いを催告した後でなければ、そのことを理由として契約解除・残額の支払いを請求することはできません。本肢は「直ちに…契約を解除することができる」としているので違反行為となります(宅建業法42条)。
    宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の割賦販売の契約について賦払金の支払の義務が履行されない場合においては、三十日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払の遅滞を理由として、契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない。
  4. 誤り。未完成物件の場合は、受領しようとする手付金等の額が(受領済の額を含めて)代金の5%または1,000万円を超える場合に保全措置が必要となります。
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    本肢の建物の代金は5,000万円ですから「5,000万円×5%=250万円」以下ならば保全措置不要で受領できます。Bから受領しようとしている手付金は200万円なので保全措置を講じる必要はありません。
したがって正しい記述は[1]です。