宅建試験過去問題 令和2年10月試験 問44(改題)

問44

宅地建物取引業者が行う宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、特に断りのない限り、説明の相手方は宅地建物取引業者ではないものとし、書面の交付には、宅地建物取引業者の相手方等の承諾を得て行う電磁的方法による提供を含むものとする。
  1. 昭和55年に新築の工事に着手し完成した建物の売買の媒介を行う場合、当該建物が地方公共団体による耐震診断を受けたものであるときは、その内容を説明しなければならない。
  2. 貸借の媒介を行う場合、敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項を説明しなければならない。
  3. 自らを委託者とする宅地又は建物に係る信託の受益権の売主となる場合、取引の相手方が宅地建物取引業者であっても、重要事項説明書を交付して説明をしなければならない。
  4. 区分所有建物の売買の媒介を行う場合、一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容を説明しなければならないが、既に積み立てられている額について説明する必要はない。

正解 4

問題難易度
肢15.5%
肢27.0%
肢318.7%
肢468.8%

解説

  1. 正しい。昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手した旧耐震基準の建物であって、所定の耐震診断を受けている場合には、売買・貸借を問わず、その内容の説明が必要となります(宅建業法規則16条の4の3第5号)。
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    五 当該建物(昭和五十六年六月一日以降に新築の工事に着手したものを除く。)が建築物の耐震改修の促進に関する法律第四条第一項に規定する基本方針のうち同条第二項第三号の技術上の指針となるべき事項に基づいて次に掲げる者が行う耐震診断を受けたものであるときは、その内容

    ニ 地方公共団体
    建物の売買においては、売主は取引の対象となる建物(昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く。)について耐震診断を受けなければならず、また、その診断の結果を重要事項説明書に記載しなければならない。H30-35-1
    建物の売買の媒介を行う場合、当該建物の売主に耐震診断の記録の有無を照会したにもかかわらず、当該有無が判別しないときは、自ら耐震診断を実施し、その結果を説明する必要がある。H26-34-1
    宅地建物取引業者は、貸借の媒介の対象となる建物(昭和56年5月31日以前に新築)が、指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関又は地方公共団体による耐震診断を受けたものであっても、その内容を重要事項説明において説明しなくてもよい。H25-30-3
    昭和55年に竣工した建物の売買を行う場合、当該建物について耐震診断を実施した上で、その内容を説明しなければならない。H24-30-4
    昭和60年10月1日に新築の工事に着手し、完成した建物の売買の媒介を行う場合、当該建物が指定確認検査機関による耐震診断を受けたものであっても、その内容は説明する必要はない。H23-32-2
    令和7年10月に新築の工事に着手した建物の売買において、当該建物が指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関又は地方公共団体による耐震診断を受けたものであるときは、その内容を買主に説明しなければならない。H19-35-3
  2. 正しい。宅地建物の貸借の取引では、敷金や保証金などの名目で賃貸人が金銭を預かることが多いので、敷金等の精算に関する事項が説明事項となっています(宅建業法規則16条の4の3第11号)。
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    敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項
    建物の貸借の媒介を行う場合、敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項を説明しなければならない。R7-43-ウ
    宅地の貸借の媒介を行う場合における、「敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項」R3⑩-36-4
    建物の貸借の媒介を行う場合、Aは、当該貸借に係る契約の終了時において精算することとされている敷金の精算に関する事項について、説明しなければならない。H21-33-4
    敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項H18-33-4
  3. 正しい。宅地建物取引業者が、自らを委託者とする宅地建物の信託に係る信託受益権を自ら売主として販売する場合には、買主(宅建業者を含む)に対し、その信託不動産についての重要事項説明書を交付し、説明をする必要があります(宅建業法35条3項)。ただし、信託受益権は金融商品であるため、金融商品取引法で契約前の説明が不要とされている3つの場合については、宅建業法でも重説が不要とされています(宅建業法規則16条の4の4第1項)。
    1. 相手方が特定投資家(金融商品取引業者、投資法人、銀行、保険会社、国など投資のプロ)である場合
    2. 相手方に対し、契約前1年以内に同一の内容の重要事項説明をしている場合
    3. 相手方に目論見書(重説の記載事項を全て含む)を交付している場合
    信託受益権は金商法上の金融商品です。宅地建物取引業者であっても投資に関してはプロとまでは言えないため、買主が宅地建物取引業者であるときも重要事項説明書の交付・説明の義務があります。
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    宅地建物取引業者は、宅地又は建物に係る信託(当該宅地建物取引業者を委託者とするものに限る。)の受益権の売主となる場合における売買の相手方に対して、その者が取得しようとしている信託の受益権に係る信託財産である宅地又は建物に関し、その売買の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。ただし、その売買の相手方の利益の保護のため支障を生ずることがない場合として国土交通省令で定める場合は、この限りでない。
    法第三十五条第三項ただし書の国土交通省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
    一 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三十一項に規定する特定投資家(同法第三十四条の二第五項により特定投資家以外の顧客とみなされる者を除く。)及び同法第三十四条の三第四項により特定投資家とみなされる者を信託の受益権の売買の相手方とする場合
    二 信託の受益権の売買契約の締結前一年以内に売買の相手方に対し当該契約と同一の内容の契約について書面を交付して説明をしている場合
    三 売買の相手方に対し金融商品取引法第二条第十項に規定する目論見書(書面を交付して説明すべき事項のすべてが記載されているものに限る。)を交付している場合
    自らを委託者とする宅地又は建物に係る信託の受益権の売主となる場合、相手方に金融商品取引法第2条第10項に規定する目論見書を交付し、宅地建物取引業法第35条第3項の規定に基づき説明すべき事項のすべてが当該目論見書に記載されているときは、重要事項説明書の交付及び説明を省略することができる。R7-43-ア
    Aは、販売の対象が信託の受益権であったので、買主Bに対し、宅地建物取引士でない従業員に説明をさせた。H20-36-ア
  4. [誤り]。区分所有建物の売買・交換では、維持修繕費用の積立てについて規約の定めがある場合、その内容と既に積み立てられている額が重要事項説明の事項となります(宅建業法規則16条の2第6号)。
    当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額
    区分所有建物である中古マンションの一室の売買の媒介を行う場合、当該1棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額について説明しなければならない。R6-26-エ
    中古マンションの売買の媒介を行う場合、当該マンションの計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額について説明しなければならない。H29-41-4
    当該マンションの建物の計画的な維持修繕のための費用の積立を行う旨の規約の定めがある場合、Aは、その内容を説明すれば足り、既に積み立てられている額については説明する必要はない。H20-37-3
    売買契約の対象となる区分所有建物に、計画的な維持修繕費用の積立てを行う旨の規約の定めがある場合は、その旨を説明すれば足り、既に積み立てられている額を説明する必要はない。H16-37-1
    Aは、売主Dと買主Eとの間における中古マンションの売買を媒介するに当たり、管理規約に定めのある修繕積立金をDが滞納していたが、Eに対し、そのことに関して法第35条の重要事項の説明を行わなかった。H15-45-4
したがって誤っている記述は[4]です。