売買契約(全31問中12問目)

No.12

事業者ではないAが所有し居住している建物につきAB間で売買契約を締結するに当たり、Aは建物引渡しから3か月に限り担保責任を負う旨の特約を付けたが、売買契約締結時点において当該建物の構造耐力上主要な部分に契約不適合が存在しており、Aはそのことを知っていたがBに告げず、Bはそのことを知らなかった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
令和元年試験 問3
  1. Bが当該契約不適合の存在を建物引渡しから1年が経過した時に知った場合、当該契約不適合の存在を知った時から2年後にその旨をAに通知しても、BはAに対して担保責任を追及することができる。
  2. 建物の構造耐力上主要な部分の契約不適合については、契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるか否かにかかわらず、Bは契約不適合を理由に売買契約を解除することができる。
  3. Bが契約不適合を理由にAに対して損害賠償請求をすることができるのは、契約不適合を理由に売買契約を解除することができない場合に限られる。
  4. AB間の売買をBと媒介契約を締結した宅地建物取引業者Cが媒介していた場合には、BはCに対して担保責任を追及することができる。

正解 1

問題難易度
肢154.7%
肢223.4%
肢38.8%
肢413.1%

解説

  1. [正しい]。本問は売主が一般人なので、宅建業法ではなく民法の規定に則って考える必要があります。
    民法の契約不適合責任の規定は任意規定ですから、当事者同士が合意すればどのような契約内容にすることも可能です(契約自由の原則)。したがって、契約不適合に関して売主に通知する期間を3カ月とする特約自体は問題ありません。
    しかし、売主が知りながら告げなかった不適合については、特約の有無にかかわらず責任を免れることができません(民法572条)。契約不適合担保責任を追及するための通知期間は、買主が知った時から1年が原則ですが、引渡し時に売主が悪意または善意重過失である不適合については、1年という制限は適用されません(民法566条)。Aは、建物引渡し時に契約不適合の存在を知っていたのですから、買主は知った時から1年以内でなくても、当該請求権が消滅時効にかかるまでは売主の担保責任を追及できます。
    売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
    売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
    請負人が担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。H29-7-4
    売買契約に、契約不適合についてのAの担保責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、Aが知りながらBに告げなかった契約不適合については、Aは担保責任を負わなければならない。H19-11-1
    請負契約の目的物たる建物の契約不適合について、Bが担保責任を負わない旨の特約をした場合には、Aは当該建物の契約不適合についてBの責任を一切追及することができなくなる。H18-6-4
  2. 誤り。売買の目的物に契約不適合があった場合、その契約不適合が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微でなければ買主は契約解除を申し出ることができます(民法541条、民法542条)。契約不適合が軽微である場合は契約解除できませんが、本肢は「軽微であるか否かにかかわらず」としているので誤りです。
    当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
    売買代金を受領したCが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示したとしても、Bは、Cに対して相当の期間を定めた催告をしなければ、本件契約を解除することができない。R6-4-1
    Bが引渡しを受けた甲自動車が故障を起こしたときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。R3⑩-7-3
    債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。R2⑩-3-3
    ①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるが、②の契約については、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することはない。R2⑩-9-4
    本件建物に存在している契約不適合のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でも、AはBとの契約を一方的に解除することができない。H26-6-4
    売買の目的物である新築建物に、建て替えざるを得ないような重大な瑕疵があって契約の目的を達成できない場合には、買主は売買契約を解除することができる。H23-9-2
    請負契約の目的物たる建物に契約不適合があり、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合でも、Aは原則として請負契約を解除することができない。H18-6-3
    Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。H18-8-2
    Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは、その欠陥が契約及び取引の社会通念に照らして軽微でないときに限られる。H15-10-2
    Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。H14-8-1
    Bは、この不適合が売買契約及び社会通念に照らして軽微でない場合に限り、この売買契約を解除できる。H14-9-4
  3. 誤り。契約不適合を理由に売買契約を解除することができる場合でも、それに加えて損害賠償請求をすることができます(民法545条4項)。
    解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
    Aは、Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも、Bに対して損害賠償を請求することはできない。H21-8-4
    Aは、この売買契約を解除するとともに、Bに対し、売買契約締結後解除されるまでの土地の値下がりによる損害を理由として、賠償請求できる。H14-8-2
  4. 誤り。担保責任の追及は売主に対してのみ可能です(民法562~564条)。媒介者である宅地建物取引業者に対してはできません。
したがって正しい記述は[1]です。