宅建試験過去問題 令和2年10月試験 問5

問5

AとBとの間で令和6年7月1日に締結された委任契約において、委任者Aが受任者Bに対して報酬を支払うこととされていた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。
  2. Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。
  3. Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。
  4. Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。

正解 1

問題難易度
肢158.7%
肢219.2%
肢314.7%
肢47.4%

解説

  1. [正しい]。委任者の帰責事由により委任が終了した場合、委任に関する報酬の定めではなく契約の一般原則に従って処理されます。債権者(=委任者)有責により債務を履行することができなくなった場合、債務者(=受任者)はその反対給付である報酬全額の支払いを請求できます。ただし、債務を免れたことによって得た利益がある場合、それを債権者に償還することになります(民法536条2項)。
    債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
    請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。H29-7-2
    甲建物が同年9月15日時点でBの責に帰すべき火災により滅失した場合、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。H19-10-3
  2. 誤り。受任者は、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務(善管注意義務)を負います(民法644条)。これは自己の財産と同一の注意義務より重く、受任者と同様な職業・地位にある者に対して一般に期待される水準の義務です。
    受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
    委託の受任者は、報酬を受けて受任する場合も、無報酬で受任する場合も、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。H20-7-2
  3. 誤り。受任者の帰責事由により委任事務が途中で履行できなくなったときでも、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求することが可能です(民法648条3項)。
    受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
    一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
    二 委任が履行の中途で終了したとき。
  4. 誤り。委任事務の継続義務は急迫の事情があるときに限り生じるので、「急迫の事情の有無にかかわらず」とする点が誤りです。
    受任者の死亡は委任契約の終了事由です(民法653条)。委任終了時に急迫の事情があるとき、受任者の相続人や法定代理人は、委任者等が委任事務を処理できるようになるまで必要な処分をしなければなりません(民法654条)。
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    委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
    委任契約で本人が死亡しても代理権が消滅しない旨を合意して代理人に代理権を与えた場合、本人が死亡しても代理権は消滅しない。R6-2-3
    委任契約において、委任者又は受任者が死亡した場合、委任契約は終了する。H13-6-1
したがって正しい記述は[1]です。