業務上の規制(全77問中3問目)

No.3

宅地建物取引業者Aがその業務に関して行う広告に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
令和3年12月試験 問30
  1. Aは、中古の建物の売買において、当該建物の所有者から媒介の依頼を受け、取引態様の別を明示せずに広告を掲載したものの、広告を見た者からの問合せはなく、契約成立には至らなかった場合には、当該広告は法第34条の規定に違反するものではない。
  2. Aは、自ら売主として、建築基準法第6条第1項の確認の申請中である新築の分譲マンションについて「建築確認申請済」と明示した上で広告を行った。当該広告は、建築確認を終えたものと誤認させるものではないため、法第33条の規定に違反するものではない。
  3. Aは、顧客を集めるために売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとしたが注文がなく、売買が成立しなかった場合であっても、監督処分の対象となる。
  4. Aは、免許を受けた都道府県知事から宅地建物取引業の免許の取消しを受けたものの、当該免許の取消し前に建物の売買の広告をしていた場合、当該建物の売買契約を締結する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなされる。

正解 3

問題難易度
肢12.2%
肢23.2%
肢385.1%
肢49.5%

解説

  1. 誤り。取引態様の別とは、宅地建物取引業者がどのような立場で取引に関与するのかを示すもので、「売主」「代理」「媒介(仲介)」のいずれかです。
    取引態様の別の明示は、①広告をするとき、②注文を受けたときにしなければなりません。本肢のように取引態様の別を明示せずに広告を行った場合、その時点で宅建業法違反となります(宅建業法34条1項)。
    宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となつて当該売買若しくは交換を成立させるか、代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別(次項において「取引態様の別」という。)を明示しなければならない。
  2. 誤り。宅地建物取引業者は、都市計画法の開発許可、建築基準法の建築確認、宅造法の宅地造成許可等の必要な処分を受けるまでは、その工事完了前の宅地建物の広告をしてはいけません(宅建業法33条)。建築確認の申請段階で広告を行うことは、宅建業法の規定に違反します。この規定は未完成物件の「青田売り」による紛争を防止するためにあります。
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    宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。
  3. [正しい]。売る意思のない条件の良い物件を広告することは「おとり広告」に該当し、誇大広告等を規制する宅建業法32条に違反する行為となります(宅建業法32条解釈運用-第32条関係)。契約に至らなかった場合でも誇大広告をした時点で違反となり、指示処分や業務停止処分の対象となります(宅建業法65条2項)。
    宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
    「誇大広告等」とは、本条において規定されるところであるが、顧客を集めるために売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとする、いわゆる「おとり広告」及び実際には存在しない物件等の「虚偽広告」についても本条の適用があるものとする。
  4. 誤り。宅地建物取引業者の免許が失効した場合、その宅地建物取引業者であった者及びその一般承継人は、その宅地建物取引業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内において、なお宅地建物取引業者とみなされます(宅建業法76条)。
    既に契約を締結している取引に関しては、相手方の保護のために無免許操業の禁止規定を適用外にするという趣旨ですので、これから契約を締結しようとしている取引については対象外です。
    第三条第二項の有効期間が満了したとき、第十一条第二項の規定により免許が効力を失つたとき、又は宅地建物取引業者が第十一条第一項第一号若しくは第二号に該当したとき、若しくは第二十五条第七項、第六十六条若しくは第六十七条第一項の規定により免許を取り消されたときは、当該宅地建物取引業者であつた者又はその一般承継人は、当該宅地建物取引業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなす。
したがって正しい記述は[3]です。