売買契約(全31問中29問目)
No.29
Aは、A所有の土地を、Bに対し、1億円で売却する契約を締結し、手付金として1,000万円を受領した。Aは、決済日において、登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供したが、Bが、土地の値下がりを理由に残代金を支払わなかったので、登記及び引渡しはしなかった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。平成14年試験 問8
- Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。
- Aは、この売買契約を解除するとともに、Bに対し、売買契約締結後解除されるまでの土地の値下がりによる損害を理由として、賠償請求できる。
- Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合で、Cがやはり土地の値下がりを理由としてBに代金の支払をしないとき、Bはこれを理由として、AB間の売買契約を解除することはできない。
- Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合、Aは、AB間の売買契約を解除しても、Cのこの土地を取得する権利を害することはできない。
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正解 4
問題難易度
肢19.1%
肢219.9%
肢318.3%
肢452.7%
肢219.9%
肢318.3%
肢452.7%
分野
科目:1 - 権利関係細目:8 - 売買契約
解説
- 正しい。債務不履行があった場合の契約解除は「できる」というだけであって、必ずしなければならないわけではありません(民法541条)。よって、売買契約を解除せず、Bに対し、引き続き残代金の支払を請求し続ける選択も可能です。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
売買代金を受領したCが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示したとしても、Bは、Cに対して相当の期間を定めた催告をしなければ、本件契約を解除することができない。(R6-4-1)Bが引渡しを受けた甲自動車が故障を起こしたときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。(R3⑩-7-3)債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。(R2⑩-3-3)①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるが、②の契約については、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することはない。(R2⑩-9-4)建物の構造耐力上主要な部分の契約不適合については、契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるか否かにかかわらず、Bは契約不適合を理由に売買契約を解除することができる。(R1-3-2)本件建物に存在している契約不適合のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でも、AはBとの契約を一方的に解除することができない。(H26-6-4)売買の目的物である新築建物に、建て替えざるを得ないような重大な瑕疵があって契約の目的を達成できない場合には、買主は売買契約を解除することができる。(H23-9-2)請負契約の目的物たる建物に契約不適合があり、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合でも、Aは原則として請負契約を解除することができない。(H18-6-3)Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。(H18-8-2)Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは、その欠陥が契約及び取引の社会通念に照らして軽微でないときに限られる。(H15-10-2)Bは、この不適合が売買契約及び社会通念に照らして軽微でない場合に限り、この売買契約を解除できる。(H14-9-4) - 正しい。契約解除と損賠償請求は別個の権利です。したがって、債務不履行による契約解除が行われた場合でも、損害賠償請求をすることはできます(民法545条4項、民法415条)。よって、契約解除時に土地が値下がりしていた場合、Aは土地の値下がりによる填補賠償をBに対して請求できます。
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
- 正しい。BC間の転売契約とAB間の売買契約は別のものです。Aは自己の債務の履行を提供しているので、BはCの代金不払いを理由に、AB間の売買契約を債務不履行により解除することはできません。手付が交付されていますが、Aが契約の履行に着手した後なので手付解除もできません。
- [誤り]。売買契約の解除をすることにより、解除前に取引関係に入った第三者(解除前の第三者)の利益を害することができません。ただし、この解除前の第三者として保護されるためには登記などの対抗要件を得ていることが必要とされています(民法545条1項)。本肢では、登記はAからBに移転しておらず、Cも登記を備えていないので、CはBからの移転登記を受けることができないので第三者として保護される要件を満たしていません。よって、AはCに対して所有権を主張することができます(最判昭33.6.14)。
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡つて合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかつた丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない
①と②の契約が解除された場合、①ではBは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要があるのに対し、②では将来に向かって解除の効力が生じるのでAは解除までの期間の賃料をBに返還する必要はない。(R3⑫-9-1)マンションの売買契約がマンション引渡し後に債務不履行を理由に解除された場合、契約は遡及的に消滅するため、売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時履行の関係に立たない。(H27-8-イ)Aの解除前に、BがCに甲土地を売却し、BからCに対する所有権移転登記がなされているときは、BのAに対する代金債務につき不履行があることをCが知っていた場合においても、Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できない。(H21-8-1)
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