業務上の規制(全82問中64問目)

No.64

宅地建物取引業者Aが行う業務に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。
平成18年試験 問41
  1. Aは、自ら売主として売買契約を締結したが、履行の着手前に買主から手付放棄による契約解除の申出を受けた際、違約金の支払を要求した。
  2. Aは、建物の貸借の媒介において、契約の申込時に預り金を受領していたが、契約の成立前に申込みの撤回がなされたときに、既に貸主に預り金を手渡していることから、返金を断った。
  3. Aは、自ら売主として行う造成済みの宅地の売買において、買主である宅地建物取引業者と、「Aは当該宅地の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を一切負わない」旨の特約を記載した売買契約を締結した。
  4. Aは、自ら売主として工事完了前の土地付建物の売買契約を締結するとき、契約書の記載事項のうち、当該物件の引渡時期が確定しないので、その記載を省略した。

正解 3

問題難易度
肢18.0%
肢29.1%
肢372.2%
肢410.7%

解説

  1. 違反する。民法では手付解除があった場合に損害賠償を請求することはできないとしています(民法557条2項民法545条4項)。よって、履行の着手前に買主から手付放棄による契約解除の申出を受けた場合でも、違約金の支払を要求することはできません。正当な理由なく違約金を要求して解除を妨げる行為は宅建業法違反となります(宅建業法規則16条の11第3号)。
    第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。
    解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
    宅地建物取引業者の相手方等が手付を放棄して契約の解除を行うに際し、正当な理由なく、当該契約の解除を拒み、又は妨げること。
  2. 違反する。宅地建物取引業者の相手方が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒む行為は禁止されています(宅建業法規則16条の11第2号)。貸借の媒介では、宅地建物取引業者が借主から借賃、権利金、敷金等を一時的に預かり貸主に送金することがありますが、既に貸主に送金している等の理由があっても返金を断ることはできません。
    宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。
    建物の貸借の媒介に際して、賃借の申込みをした者がその撤回を申し出たので、Aはかかった諸費用を差し引いて預り金を返還した。R5-36-ア
    A:昨日、申込証拠金10万円を支払ったが、都合により撤回したいので申込証拠金を返してほしい。B:お預かりした10万円のうち、社内規定上、お客様の個人情報保護のため、申込書の処分手数料として、5,000円はお返しできませんが、残金につきましては法令に従いお返しします。H27-41-エ
    建物の売買の媒介に際し、買主から売買契約の申込みを撤回する旨の申出があったが、Aは、申込みの際に受領した預り金を既に売主に交付していたため、買主に返還しなかった。H21-40-2
    建物の貸借の媒介において、申込者が自己都合で申込みを撤回し賃貸借契約が成立しなかったため、Aは、既に受領していた預り金から媒介報酬に相当する金額を差し引いて、申込者に返還した。H20-38-2
    Aが、建物の貸借の媒介をするに当たり、借受けの申込みをした者から預り金の名義で金銭を授受した場合で、後日その申込みが撤回されたときに、Aは、「預り金は、手付金として既に家主に交付した」といって返還を拒んだ。H12-35-3
  3. [違反しない]。契約不適合を担保すべき責任に関する特約の制限(40条)は、8種制限の一つであるため、宅地建物取引業者間の取引には適用されません(宅建業法78条2項)。民法上の売主の担保責任は任意規定とされているので、買主が宅地建物取引業者である場合には当事者間の合意により担保責任を負わないとする特約も可能です。
    第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。
    Aは、宅地建物取引業者である買主Eとの間で建築工事完了前の建物を5,000万円で売却する契約を締結した場合、保全措置を講じずに、当該建物の引渡前に500万円を手付金として受領することができる。H25-40-3
    Aは、宅地建物取引業者であるBとの間で建築工事が完了した建物を1億円で販売する契約を締結し、法第41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じずに、当該建物の引渡し前に2,500万円を手付金として受領した。H20-41-4
    AはBと売買契約を締結し、代金の額の10分の3の金額を手付として受領した。H18-38-1
    Aは、宅地建物取引業者であるBとの売買契約の締結に際して、当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を1,200万円とする特約を定めた。この特約は無効である。H17-43-1
    宅地建物取引業者である買主Dは、建物の物件の説明をAの事務所で受けた。後日、Aの事務所近くの喫茶店で買受けを申し込むとともに売買契約を締結した場合、Dは売買契約の解除はできる。H14-45-3
  4. 違反する。物件の引渡し時期は37条書面の必須記載事項です。いつが履行期なのかはっきりしないとトラブルに繋がるため、具体的な年月日を記載する必要があります。引渡時期が未確定などの理由があっても、未定と記載したり記載を省略したりすることはできません(宅建業法37条1項4号)。
    宅地の売買における当該宅地の引渡しの時期について、重要事項説明において説明しなければならない。R5-33-2
    Aは、その媒介により借主Dと建物の貸借の契約を成立させた。この際、借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるので、その額や当該金銭の授受の時期だけでなく、当該金銭の授受の目的についても37条書面に記載し、Dに交付した。R4-44-3
    宅地建物取引業者は、その媒介により建物の売買の契約を成立させた場合において、当該建物の引渡しの時期又は移転登記の申請の時期のいずれかを37条書面に記載し、当該契約の各当事者に交付しなければならない。R3⑫-26-1
    Aが建物の賃貸借契約を成立させた場合においては、契約の当事者が宅地建物取引業者であっても、37条書面には、引渡しの時期及び賃借権設定登記の申請の時期を記載しなければならない。R2⑫-35-イ
    Aは、買主が宅地建物取引業者であるときは、当該宅地の引渡しの時期及び移転登記の申請の時期を37条書面に記載しなくてもよい。R2⑩-37-エ
    建物の引渡しの時期H30-34-ウ
    Aは、宅地建物取引業者Bと宅地建物取引業者Cの間で締結される宅地の売買契約の媒介においては、37条書面に引渡しの時期を記載しなくてもよい。H28-42-1
    Aが媒介により中古戸建住宅の売買契約を締結させた場合、Aは、引渡しの時期又は移転登記の申請の時期のいずれかを37条書面に記載しなければならず、売主及び買主が宅地建物取引業者であっても、当該書面を交付しなければならない。H27-38-イ
    宅地建物取引業者は、自ら売主として宅地の売買契約を締結した場合は、買主が宅地建物取引業者であっても、37条書面に当該宅地の引渡しの時期を記載しなければならない。H26-40-ウ
    建物の引渡しの時期H25-35-イ
    B及びCが宅地建物取引業者である場合には、37条書面において、引渡しの時期の記載を省略することができる。H22-37-3
    宅地及び建物の引渡しの時期については、特に定めをしなかったため、重要事項説明書にはその旨記載し内容を説明したが、契約書面には記載しなかった。H13-39-3
したがって違反しないものは[3]です。