宅建試験過去問題 令和7年試験 問10

問10

Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約による甲土地の引渡し後に、目的物の品質に関して契約の内容に適合しない土壌汚染が見つかった場合の売主の担保の責任(以下この問において「契約不適合責任」という。)に基づく損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定、宅地建物取引業法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. Bは、甲土地の引渡しの日から11年が経過した時点で甲土地の土壌汚染を発見し、発見した時点から1年以内にAに通知した。Aが当該土壌汚染があることを重大な過失なく知らなかった場合、Aが宅地建物取引業者であるか否かにかかわらず、Bは損害賠償を請求することはできない。
  2. 甲土地の引渡しの日から3年以内に契約不適合の通知をしなければ売主は契約不適合責任を負わない旨の特約があり、Bが引渡しの日から4年が経過した時点で土壌汚染を発見して直ちにAに通知した。Aが当該土壌汚染があることを重大な過失なく知らなかった場合、Aが宅地建物取引業者であるか否かにかかわらず、Bは損害賠償を請求することはできない。
  3. 甲土地の引渡しの日から1年以内に契約不適合の通知をしなければ売主は契約不適合責任を負わない旨の特約があり、Aは甲土地に土壌汚染があることを売買契約締結時点で知っていて告げていなかった。Bが引渡しの日から3年が経過した時点で当該土壌汚染を発見して直ちにAに通知した場合、Aが宅地建物取引業者であるか否かによって、Bが損害賠償を請求できるか否かの結論が異なる。
  4. 売主は契約不適合責任を一切負わない旨の特約があり、Bは引渡しの日から1年が経過した時点で土壌汚染を発見して直ちにAに通知した。Aが当該土壌汚染があることを重大な過失なく知らなかった場合、Aが宅地建物取引業者であるか否かによって、Bが損害賠償を請求できるか否かの結論が異なる。

正解 3

問題難易度
肢117.0%
肢212.2%
肢358.0%
肢412.8%

解説

  1. 正しい。契約不適合責任の追及権にも消滅時効の適用があります(最判平13.11.27)。このため、引渡しから10年の経過で「権利を行使することができる時から10年」を満たし、請求権が消滅時効にかかります。本肢は引渡しから11年を経過しているため、不適合の発見から1年以内に売主に通知しても、もはや契約不適合責任を追及することはできません。
    瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用がある
    本件契約が、事務所の用に供するコンクリート造の建物の建築を目的とする場合、Bの担保責任の存続期間を20年と定めることができる。R1-8-2
    買主の売主に対する契約不適合による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。H26-3-3
    指名債権譲渡の予約契約を締結し、この予約契約締結の事実を確定日付のある証書により債務者に通知していれば、予約の完結によりなされる債権譲渡の効力を債務者以外の第三者に対抗することができる。H19-9-4
  2. 正しい。売主が宅地建物取引業者でない場合には、担保期間の通知期間を制限する特約は有効です。また、売主が宅地建物取引業者である場合にも、本肢の3年のように、通知期間を引渡しから2年以上とするものは有効となります(宅建業法40条)。両者とも有効な特約であるため、4年後に発見された不適合について、Bは契約不適合責任を追及することはできません。
    宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
    2 前項の規定に反する特約は、無効とする。
    売主は契約不適合責任を一切負わない旨の特約があり、Bは引渡しの日から1年が経過した時点で土壌汚染を発見して直ちにAに通知した。Aが当該土壌汚染があることを重大な過失なく知らなかった場合、Aが宅地建物取引業者であるか否かによって、Bが損害賠償を請求できるか否かの結論が異なる。R7-10-4
    売買契約で、Aが甲土地の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を一切負わない旨を合意したとしても、Aは甲土地の引渡しの日から2年以内にBから甲土地の不適合について通知を受けた場合は、当該責任を負わなければならない。H20-9-1
  3. [誤り]。売主が引渡し時に知っていたのに買主に告げなかった不適合に関しては、通知期間の制限がなく、契約不適合責任の追及権が消滅時効にかかるまでは請求できます。これは強行規定と解されているため、特約で除外することはできません(民法566条)。
    本肢では「契約時点で知っていて告げていなかった」とあるため、当該不適合については担保責任の特約は適用されません。このため、契約不適合責任を負わない旨の特約があっても、引渡しから3年後に発見した不適合について、Bは契約不適合責任を追及することができます。したがって、Aが宅地建物取引業者であるかどうかに関係なく、結論は同じです。
    売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
    目的物の引渡しの時点で目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことをAが知っていた場合には、当該不適合に関する請求権が消滅時効にかかっていない限り、BはAの担保責任を追及することができる。R3⑫-4-4
    売買契約で、甲土地が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任について、Aは甲土地の引渡しの日から2年以内にその不適合についてBから通知を受けたときのみ当該責任を負う旨を合意したとしても、Aが知っていたのにBに告げなかった不適合については、当該責任に基づく損害賠償請求権が時効で消滅するまで、Bは当該損害賠償を請求できる。H20-9-4
    売買契約に、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を通知すべき期間について特約を設けていない場合、Bが種類又は品質に関して担保責任を追及するときは、その不適合があることを知った時から1年以内にAに通知しなければならない。H19-11-4
    Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、契約締結から1年以内に担保責任の追及を行わなければ、AはBに対して担保責任を追及することができなくなる。H15-10-3
    Bが、Aに対し、本件不適合に基づく権利を行使するには、Bが本件不適合を知った時から1年以内にAに通知しなければならない。H14-9-3
  4. 正しい。売主が宅地建物取引業者でない場合には、担保責任を一切負わない特約は有効です。このため、Aが宅地建物取引業者でない場合には、特約のとおり、1年後に発見された不適合について、契約不適合責任を追及することはできません。一方、売主が宅地建物取引業者の場合には、特約は無効となり、民法の「不適合を知ってから1年以内に通知すればよい」というルールが適用されます。Bは引渡しから1年後に不適合を発見し、直ちに通知しているため、Bは契約不適合責任を追及できます(宅建業法40条民法566条)。したがって、Aが宅地建物取引業者であるかどうかで、結論が異なります。
    宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
    2 前項の規定に反する特約は、無効とする。
    売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
    甲土地の引渡しの日から3年以内に契約不適合の通知をしなければ売主は契約不適合責任を負わない旨の特約があり、Bが引渡しの日から4年が経過した時点で土壌汚染を発見して直ちにAに通知した。Aが当該土壌汚染があることを重大な過失なく知らなかった場合、Aが宅地建物取引業者であるか否かにかかわらず、Bは損害賠償を請求することはできない。R7-10-2
    売買契約で、Aが甲土地の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を一切負わない旨を合意したとしても、Aは甲土地の引渡しの日から2年以内にBから甲土地の不適合について通知を受けた場合は、当該責任を負わなければならない。H20-9-1
したがって誤っている記述は[3]です。