宅建試験過去問題 令和7年試験 問8
問8
A、B及びCがそれぞれ3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、甲土地を分割しない旨の契約は存在しないものとする。
- 甲土地につき無権利のDが、自己への虚偽の所有権移転登記をした場合には、Aは、単独で、Dに対し、その所有権移転登記の抹消を求めることができる。
- Aが甲土地についての自己の持分を放棄した場合には、その持分は国庫に帰属する。
- Aが死亡し、E及びFが相続した場合には、B及びCは、Aの遺産についての遺産分割がされる前であっても、E及びFに対して共有物分割の訴えを提起することができる。
- AがB及びCに無断で甲土地を占有している場合であっても、Bは、Aに対し、当然には自己に甲土地を明け渡すように求めることができない。
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正解 2
問題難易度
肢15.2%
肢277.2%
肢37.7%
肢49.9%
肢277.2%
肢37.7%
肢49.9%
分野
科目:1 - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- 正しい。無権利者が共有不動産について虚偽の所有権移転登記をした場合に、その登記の抹消を求めることは保存行為とされています(最判昭31.5.10)。保存行為は各共有者が行うことができるため、Aは単独で、所有権移転登記の抹消を求めることができます(民法252条5項)。
不動産共有者の一人はその持分権に基き、単独で当該不動産につき登記簿上所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができる。
各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
甲土地の所有権の登記名義人となっている者が所有者ではないEである場合、持分に基づいてEに対して登記の抹消を求めるためには、所在が判明しているA、B、Cのうち2人の同意が必要である。(R6-3-2) - [誤り]。国庫に帰属ではありません。共有者の1人が死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
- 正しい。相続財産に属する共有持分は、共有相続人間で遺産の分割をすべきときは、裁判による共有物分割を請求することはできません。ただし、相続開始から10年が経過すれば、他の共有持分と合わせて、共有物分割の裁判をすることができます(民法258条の2第1項・2項)。
相続財産に属する共有持分はまず遺産分割(調停や審判含む)で解決すべきものとされ、遺産分割ができない場合に遺産共有関係を解消する手段として裁判手続きが用意されている形です。共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。 - 正しい。各共有者は、共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができます(民法249条1項)。そのため、共有者の1人が自己の持分に基づいて占有しているのであれば、無断であっても、他の共有者は(持分の過半数を有していても)は当然には明渡しを請求することはできません(最判昭41.5.19)。
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる
共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。
共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することができる。(H30-10-4)他の共有者との協議に基づかないで、自己の持分に基づいて1人で現に共有物全部を占有する共有者に対し、他の共有者は単独で自己に対する共有物の明渡しを請求することができる。(H23-3-4)共有者の協議に基づかないでAから甲土地の占有使用を承認されたDは、Aの持分に基づくものと認められる限度で甲土地を占有使用することができる。(H19-4-1)Bが、その持分に基づいて単独でこの建物全部を使用している場合は、A・Cは、Bに対して、理由を明らかにすることなく当然に、その明渡しを求めることができる。(H13-1-2)
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