宅建試験過去問題 平成30年試験 問10

問10

相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. 無権代理人が本人に無断で本人の不動産を売却した後に、単独で本人を相続した場合、本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じる。
  2. 相続財産に属する不動産について、遺産分割前に単独の所有権移転登記をした共同相続人から移転登記を受けた第三取得者に対し、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。
  3. 連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合、相続人らは被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となる。
  4. 共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することができる。

正解 4

問題難易度
肢115.0%
肢29.6%
肢314.2%
肢461.2%

解説

  1. 正しい。無権代理人が本人の承諾を得ずに契約を行い、その後、単独で本人を相続した場合は、本人と無権代理人の地位が同一人に帰することになります。この場合、本人自ら契約をしたのと同様に法律効果が生じます(最判昭40.6.18)。
    無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたつた場合には、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である。
    本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と、本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで、法律効果は同じである。R1-5-2
    Aの死亡により、BがAの唯一の相続人として相続した場合、Bは、Aの追認拒絶権を相続するので、自らの無権代理行為の追認を拒絶することができる。H24-4-2
    Aが無権代理人であってDとの間で売買契約を締結した後に、Bの死亡によりAが単独でBを相続した場合、Dは甲土地の所有権を当然に取得する。H20-3-3
  2. 正しい。遺産分割前の相続財産は共同相続人の共有に属します。遺産分割前に共同相続人の一人が単独で所有権移転登記し、第三者に譲渡した場合であっても、他の共同相続人は自己の法定相続分に相当する共有持分までは、登記なくしてその第三者に対抗することができます(民法899条の2第1項)。
    相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
  3. 正しい。連帯債務者の一人が死亡し、相続人が複数人いる場合、共同相続人は被相続人の連帯債務を分割して承継することになり、その責任の範囲で本来の債務者とともに連帯債務者となります(民法899条最判昭34.6.19)。例えば、B・CがAを債権者とする1,000万円の連帯債務を有していたとき、Bが死亡してD・Eが各2分の1で連帯債務を承継したとします。この場合、AはD・Eに対しても債務の履行を請求することができます。ただし、D・EはBの責任を半分ずつ取得しているに過ぎないので、Aが請求できる額は各500万円に制限されます。
    各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
    連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきである。
    C及びDが単純承認をした場合には、法律上当然に分割されたAに対する債務を相続分に応じてそれぞれが承継する。H19-12-3
  4. [誤り]。共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができるので、たとえ過半数を超える相続人であっても、当然にその共有物の明渡しを請求することはできません(民法249条1項最判昭41.5.19)。
    各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
    共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。
    他の共有者との協議に基づかないで、自己の持分に基づいて1人で現に共有物全部を占有する共有者に対し、他の共有者は単独で自己に対する共有物の明渡しを請求することができる。H23-3-4
    共有者の協議に基づかないでAから甲土地の占有使用を承認されたDは、Aの持分に基づくものと認められる限度で甲土地を占有使用することができる。H19-4-1
    Bが、その持分に基づいて単独でこの建物全部を使用している場合は、A・Cは、Bに対して、理由を明らかにすることなく当然に、その明渡しを求めることができる。H13-1-2
したがって誤っている記述は[4]です。