宅建試験過去問題 令和元年試験 問14

問14

不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。
  1. 登記の申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないときは、登記官は、理由を付した決定で、当該申請を却下しなければならない。
  2. 所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記は、することができない。
  3. 登記官は、一筆の土地の一部が別の地目となったときであっても、職権で当該土地の分筆の登記をすることはできない。
  4. 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。

正解 3

問題難易度
肢113.3%
肢27.2%
肢359.9%
肢419.6%

解説

  1. 正しい。不動産は所在地ごとに管轄する登記所が定められており、登記の申請は、その不動産を管轄する登記所に対して行わなければなりません。管轄していない不動産に対する登記の申請は、却下事由となるので、登記官は理由を付した決定で、当該申請を却下しなければなりません(不動産登記法25条1号)。
    登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
    一 申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。
    不動産の登記申請において、申請書に必要な書面又は図面が添付されていない場合には、申請人が即日にこれを補正したときでも、登記官は、理由を付した決定をもって、当該申請を却下しなければならない。H15-15-1
    土地の分筆の登記の申請書に記載する分割前の土地の地積は、登記記録上の地積と一致していなければならない。H12-15-2
  2. 正しい。次に挙げる6つの土地について、合筆の登記をすることはできません(不動産登記法41条)。所有者が相互の異なる土地を合筆すると、1つの土地の一部に対する所有権が生まれたり、1つの土地に複数の所有権が設定されることになります。このような状況は一物一権主義の原則に反するため、合筆が認められていません。
    1. 相互に接続していない土地
    2. 地目又は地番区域が相互に異なる土地
    3. 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地
    4. 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地
    5. 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地
    6. 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地
    所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地については、分筆の登記をすることができない。R2⑫-14-2
    所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記は、することができない。H23-14-1
    二筆の土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであっても、持分が相互に異なる土地の合筆の登記は、申請することができない。H20-16-3
    二筆の土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであっても、地目が相互に異なる土地の合筆の登記は、申請することができない。H20-16-4
  3. [誤り]。1つの土地に対して複数の地目を割り当てることはできませんから、一筆の土地の一部が別の地目となった場合、分筆登記の対象となります。登記官は、所有者から分筆の登記の申請がなかった場合でも、不動産の現状を公示するという不動産登記制度の目的を果たすため、職権で当該土地の分筆の登記をしなければなりません(不動産登記法39条2項)。
    登記官は、前項の申請がない場合であっても、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域(地番区域でない字を含む。第四十一条第二号において同じ。)を異にするに至ったときは、職権で、その土地の分筆の登記をしなければならない。
  4. 正しい。委任契約による代理権は、本人の死亡によって消滅するのが民法の原則です(民法101条1項1号)。しかし、登記申請者本人が死亡した場合であっても、登記申請者の委任を受けた代理人(司法書士や土地家屋調査士などの資格代理人)の権限は消滅しないことになっています(不動産登記法17条1号)。委任者の相続人から再度委任を受ける手間を省き、一度開始した登記手続きを迅速に進めるためです。
    代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
    一 本人の死亡
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。
    一 本人の死亡
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によって消滅する。R3⑩-14-2
    代理人の意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、本人の選択に従い、本人又は代理人のいずれかについて決する。H26-2-エ
    法人について即時取得の成否が問題となる場合、当該法人の代表機関が代理人によって取引を行ったのであれば、即時取得の要件である善意・無過失の有無は、当該代理人を基準にして判断される。H24-2-2
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。H24-14-1
    Bは、Aに対してCとの間の売買契約を委任したが、Aが、DをCと勘違いした要素の錯誤によってDとの間で契約した場合、Aに重大な過失がなければ、この契約は取り消すことができる。H14-2-1
    委任による登記申請の代理権は、本人の死亡によって消滅する。H14-15-2
したがって誤っている記述は[3]です。