宅建試験過去問題 平成26年試験 問2

問2

代理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはいくつあるか。
  1. 代理権を有しない者がした契約を本人が追認する場合、その契約の効力は、別段の意思表示がない限り、追認をした時から将来に向かって生ずる。
  2. 不動産を担保に金員を借り入れる代理権を与えられた代理人が、本人の名において当該不動産を売却した場合、相手方において本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由があるときは、表見代理の規定を類推適用することができる。
  3. 代理人は、行為能力者であることを要しないが、代理人が後見開始の審判を受けたときは、代理権が消滅する。
  4. 代理人の意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、本人の選択に従い、本人又は代理人のいずれかについて決する。
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ

正解 2

問題難易度
肢116.8%
肢270.8%
肢39.8%
肢42.6%

解説

  1. 誤り。無権代理行為も本人の追認があれば、特段の取り決めがない限り、契約時にさかのぼって効力を生じます。本肢は「追認をした時から将来に向かって」としているので誤りです(民法116条)。
    追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
    Bが、Aから代理権を授与されていないA所有の乙土地の売却につき、Aの代理人としてFと売買契約を締結した場合、AがFに対して追認の意思表示をすれば、Bの代理行為は追認の時からAに対して効力を生ずる。R2⑫-2-4
    無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。R1-5-3
    Bの無権代理行為をAが追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。H24-4-1
  2. 正しい。代理人が権限外の行為をしたとき、代理人にその権限があると信じる正当な理由が相手方にあるときは表見代理が成立します(民法110条民法109条1項)。本肢では、権限外の代理行為をしているのではなく本人の名で取引を行っていますが、表見代理が類推適用されます(最判昭44.12.19)。
    前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
    第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
    代理人が直接本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、そのように信じたことについて正当な理由があるかぎり、民法一一〇条の規定を類推して、本人はその責に任ずるものと解するのが相当である。
    BがAに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Aの売買契約締結行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がAにあるとCが信ずべき正当な理由があるときは、BC間の本件売買契約は有効となる。H18-2-2
    Bが、AにB所有土地を担保として、借金をすることしか頼んでいない場合、CがAに土地売却の代理権があると信じ、それに正当の事由があっても、BC間に売買契約は成立しない。H14-2-2
  3. 正しい。代理権は、本人の死亡、代理人の死亡・破産・後見開始の審判によって消滅します(民法111条1項)。代理人が被後見人となったことにより本人が不測の損害を受けるおそれがあるので、代理人の後見開始の審判は、代理権の消滅事由のひとつとなっています。
    代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
    一 本人の死亡
    二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
    AがBに代理権を授与した後にBが後見開始の審判を受け、その後に本件契約が締結された場合、Bによる本件契約の締結は無権代理行為となる。H30-2-4
    Aが死亡した後であっても、BがAの死亡を知らず、かつ、知らないことにつき過失がない場合には、BはAの代理人として有効に甲土地を売却することができる。H22-2-1
    Bが死亡しても、Bの相続人はAの代理人として有効に甲土地を売却することができる。H22-2-2
    Bは、Aが死亡した後でも、Aの代理人としてこの土地を売却できる。H12-1-4
  4. 誤り。代理行為についての意思表示の瑕疵等の事実は、代理人を基準に決まります(民法101条1項)。よって、本人が選択することはできません。
    代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によって消滅する。R3⑩-14-2
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。R1-14-4
    法人について即時取得の成否が問題となる場合、当該法人の代表機関が代理人によって取引を行ったのであれば、即時取得の要件である善意・無過失の有無は、当該代理人を基準にして判断される。H24-2-2
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。H24-14-1
    Bは、Aに対してCとの間の売買契約を委任したが、Aが、DをCと勘違いした要素の錯誤によってDとの間で契約した場合、Aに重大な過失がなければ、この契約は取り消すことができる。H14-2-1
    委任による登記申請の代理権は、本人の死亡によって消滅する。H14-15-2
したがって誤っているものは「二つ」です。