宅建試験過去問題 平成19年試験 問3
問3
Aが所有者として登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。- Aと売買契約を締結したBが、平穏かつ公然と甲土地の占有を始め、善意無過失であれば、甲土地がAの土地ではなく第三者の土地であったとしても、Bは即時に所有権を取得することができる。
- Aと売買契約を締結したCが、登記を信頼して売買契約を行った場合、甲土地がAの土地ではなく第三者Dの土地であったとしても、Dの過失の有無にかかわらず、Cは所有権を取得することができる。
- Aと売買契約を締結して所有権を取得したEは、所有権の移転登記を備えていない場合であっても、正当な権原なく甲土地を占有しているFに対し、所有権を主張して甲土地の明渡しを請求することができる。
- Aを所有者とする甲土地につき、AがGとの間で10月1日に、Hとの間で10月10日に、それぞれ売買契約を締結した場合、G、H共に登記を備えていないときには、先に売買契約を締結したGがHに対して所有権を主張することができる。
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正解 3
問題難易度
肢16.8%
肢214.5%
肢365.2%
肢413.5%
肢214.5%
肢365.2%
肢413.5%
分野
科目:A - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- 誤り。即時取得の規定が適用されるのは動産に限られ、不動産を即時取得することはできません(民法192条)。本肢の場合、善意無過失のAは占有開始から10年を経過しなければ所有権を時効取得することはできません(民法162条2項)。
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
- 誤り。登記に公信力はありません。公信力とは、公示された内容が真実に反していてもこれを信用して取引した者は、公示された内容が真実であった場合と同様の権利が取得できる効力のことです。
判例では、登記がA名義のままになっていることにつきDに過失があれば、登記を信頼して取引したCを保護するとしていますが、Dに過失がなければCは所有権を取得することができません(最判昭45.9.22)。本肢は「Dの過失の有無にかかわらず」としているので誤りです。およそ、不動産の所有者が、真実その所有権を移転する意思がないのに、他人と通謀してその者に対する虚構の所有権移転登記を経由したときは、右所有者は、民法九四条二項により、登記名義人に右不動産の所有権を移転していないことをもつて善意の第三者に対抗することをえないが、不実の所有権移転登記の経由が所有者の不知の間に他人の専断によつてされた場合でも、所有者が右不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示または黙示に承認していたときは、右九四条二項を類推適用し、所有者は、前記の場合と同じく、その後当該不動産について法律上利害関係を有するに至つた善意の第三者に対して、登記名義人が所有権を取得していないことをもつて対抗することをえないものと解するのが相当である。
- [正しい]。不動産に関する物権は登記をしなければ第三者に対抗できません(民法177条)。しかし、正当な権限なく占有をしている者(不法占拠者)は、この第三者に当たりません(最判昭25.12.19)。よって、本肢のように所有権を主張する相手方が単なる不法占拠者に過ぎない場合は、その所有者は登記がなくとも明渡しを請求することができます。
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
不動産の不法占有者は、民法第一七七条にいう「第三者」には当らない。
- 誤り。登記を備えていない場合は第三者に所有権を主張することはできません。よって、本肢のケースではGH共に主張はできません(民法177条)。二重譲渡があった場合には、契約の先後ではなく先に登記をした方が権利を主張できます。
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