8種制限(全72問中2問目)

No.2

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として行う売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはどれか。なお、買主は宅地建物取引業者ではないものとする。
令和4年試験 問43
  1. Aが、宅地又は建物の売買契約に際して手付を受領した場合、その手付がいかなる性質のものであっても、Aが契約の履行に着手するまでの間、買主はその手付を放棄して契約の解除をすることができる。
  2. Aが、土地付建物の売買契約を締結する場合において、買主との間で、「売主は、売買物件の引渡しの日から1年間に限り当該物件の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保する責任を負う」とする旨の特約を設けることができる。
  3. 販売代金2,500万円の宅地について、Aが売買契約の締結を行い、損害賠償の額の予定及び違約金の定めをする場合、その合計額を500万円と設定することができる。
  4. Aが建物の割賦販売を行った場合、当該建物を買主に引き渡し、かつ、代金の額の10分の3を超える額の支払を受けた後は、担保の目的で当該建物を譲り受けてはならない。

正解 2

問題難易度
肢110.0%
肢268.4%
肢311.2%
肢410.4%

解説

  1. 正しい。売主が宅地建物取引業者、買主が宅地建物取引業者ではないときに交付された手付は、いかなる名目であろうとも解約手付の性質を持つことになります。買主から売主に手付が交付された場合、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を現実に提供することで契約解除することができます(宅建業法39条2項)。したがって、買主は、売主であるAが契約の履行に着手するまでの間は、手付を放棄することで契約を解除することができます。
    宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
  2. [誤り]。契約不適合に関し通知すべき期間ではなく、契約不適合責任を負う期間を1年にしているため誤りです。
    売主が宅地建物取引業者、買主が宅地建物取引業者ではないときは、契約不適合責任に関し、買主から売主に通知すべき期間について「引渡しの日から2年以上」とする場合を除き、民法の規定である「知った時から1年以内に通知」よりも買主に不利な特約をすることはできません(宅建業法40条1項)。民法上は、契約不適合を知った時から1年以内に通知すれば、後は契約不適合責任が5年または10年の消滅時効によって消えるまで売主の責任を追及することができます。しかし、本肢の特約ではこの売主が責任を負う期間そのものを短縮する旨であるため、民法の規定より不利として無効となります。
    宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
  3. 正しい。売主が宅地建物取引業者、買主が宅地建物取引業者ではないときは、損害賠償額の予定と違約金の定めは、合計で代金の2割以下でなければなりません(宅建業法38条1項)。2,500万円の2割は500万円ですから、合計で500万円とする特約は有効に定めることができます。
    宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。
  4. 正しい。売主が宅地建物取引業者、買主が宅地建物取引業者ではない場合における割賦販売では、支払われた代金の額が代金総額の3割以下である間は所有権の留保(所有権を売主に留めること)が認められています。しかし、3割を超える代金を受け取った後は、物件を引渡し、登記も移転しなくてはなりません。このとき引き渡した物件について残代金の担保として譲り受けることは禁止されています(宅建業法43条2項)。
    宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合において、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡し、かつ、代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けた後は、担保の目的で当該宅地又は建物を譲り受けてはならない。
したがって誤っている記述は[2]です。