借地借家法(土地)(全25問中11問目)

No.11

甲土地の所有者が甲土地につき、建物の所有を目的として賃貸する場合(以下「ケース①」という。)と、建物の所有を目的とせずに資材置場として賃貸する場合(以下「ケース②」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
平成26年試験 問11
  1. 賃貸借の存続期間を60年と定めた場合には、ケース①では書面で契約を締結しなければ期間が30年となってしまうのに対し、ケース②では口頭による合意であっても期間は60年となる。
  2. ケース①では、賃借人は、甲土地の上に登記されている建物を所有している場合には、甲土地が第三者に売却されても賃借人であることを当該第三者に対抗できるが、ケース②では、甲土地が第三者に売却された場合に賃借人であることを当該第三者に対抗する方法はない。
  3. 期間を定めない契約を締結した後に賃貸人が甲土地を使用する事情が生じた場合において、ケース①では賃貸人が解約の申入れをしても合意がなければ契約は終了しないのに対し、ケース②では賃貸人が解約の申入れをすれば契約は申入れの日から1年を経過することによって終了する。
  4. 賃貸借の期間を定めた場合であって当事者が期間内に解約する権利を留保していないとき、ケース①では賃借人側は期間内であっても1年前に予告することによって中途解約することができるのに対し、ケース②では賃貸人も賃借人もいつでも一方的に中途解約することができる。

正解 3

問題難易度
肢18.8%
肢217.1%
肢361.8%
肢412.3%

解説

ケース①は「建物の所有を目的とする」ため借地借家法で定める借地権ですが、ケース②は「建物の所有を目的としない」ので民法の賃貸借の規定により判断します。
  1. 誤り。
    【ケース①】
    普通借地権の契約方法については特に定めがないので書面・口頭は関係ありません。借地借家法は、普通借地権の存続期間を30年以上と定めているため、問題なく60年の契約となります(借地借家法3条)。
    借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
    【ケース②】
    民法でも賃貸借の契約方法は特に定められていませんので書面・口頭は関係ありません。民法では賃貸借期間の上限を50年と定めています(民法604条)。よって、ケース②の存続期間は50年になります。
    賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
    賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①の期間は30年となり、ケース②の期間は15年となる。R1-11-2
    本件契約において借地権の存続期間を60年と定めても、公正証書によらなければ、その期間は30年となる。H30-11-3
    賃借権の存続期間を10年と定めた場合、本件契約が居住の用に供する建物を所有することを目的とするものであるときは存続期間が30年となるのに対し、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは存続期間は10年である。H29-11-2
    BがAとの間で期間を定めずに甲土地の借地契約を締結している場合には、Cは、いつでも正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。H19-13-4
  2. 誤り。
    【ケース①】
    借地借家法では、借地上に借地権者名義で登記をした建物を所有していれば、借地権を第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。よって、現所有者から土地の譲渡を受けた新所有者に甲土地の賃借権を対抗できます。
    借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
    【ケース②】
    賃借権の登記があれば第三者に対抗できます(民法605条)。よって、第三者に対抗する方法はないわけではありません。
    不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
    Bは、甲土地につき借地権登記を備えなくても、Bと同姓でかつ同居している未成年の長男名義で保存登記をした建物を甲土地上に所有していれば、甲土地の所有者が替わっても、甲土地の新所有者に対し借地権を対抗することができる。H30-11-4
    Aが甲建物を所有していても、建物保存登記をAの子C名義で備えている場合には、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Aは借地権を対抗することができない。H28-11-1
    二筆以上ある土地の借地権者が、そのうちの一筆の土地上に登記ある建物を所有し、登記ある建物がない他方の土地は庭として使用するために賃借しているにすぎない場合、登記ある建物がない土地には、借地借家法第10条第1項による対抗力は及ばない。H25-12-3
    建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地権の登記がなくても、その土地上の建物に借地人が自己を所有者と記載した表示の登記をしていれば、借地権を第三者に対抗することができる。H24-11-1
    甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。H18-13-4
    Bが、乙建物につき自己名義の所有権の保存登記をしている場合は、甲地につき賃借権の登記をしていないときでも、甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたCに対し、甲地の賃借権を対抗できる。H15-13-1
  3. [正しい]。
    【ケース①】
    土地の賃貸借契約で期間を定めなかった場合、借地借家法の強行規定によりその存続期間は30年となります。また賃貸人から中途解約できる特約(解約権留保特約)も無効となります(借地借家法9条)。したがって30年より前に契約を終了するためには、双方の合意による合意解除しかありません。
    この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。
    【ケース②】
    期間の定めのない土地の賃貸借では、賃貸人が解約の申入れをすれば、契約は申入れの日から1年を経過することによって終了します(民法617条1号)。
    当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
    一 土地の賃貸借 一年
  4. 誤り。借地借家法は賃借人からの解約申入れについては特に規定されていませんので、両ケースとも民法の規定に基づいて判断することになります。
    賃貸借の期間を定めた場合には、特約で当事者が中途解約できる権利を定めていない限り期間内の解約申入れはできません。よって、ケース①・ケース②の双方とも中途解約はできません(民法618条)。
    当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
    Bは、①では期間内に解約する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができ、②では期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。R4-6-3
    賃貸人も賃借人も契約期間中の中途解約をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効であるが、普通借家契約では無効である。H27-12-4
    本件普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の留保がなければ賃借人は2年間は当該建物を借りる義務があるのに対し、本件定期建物賃貸借契約では、一定の要件を満たすのであれば、中途解約できる旨の留保がなくても賃借人は期間の途中で解約を申し入れることができる。H24-12-4
    契約期間を定めた場合、賃借人は、動産の賃貸借契約である場合は期間内に解約を行う権利を留保することができるが、建物の賃貸借契約である場合は当該権利を留保することはできない。H17-15-4
したがって正しい記述は[3]です。