宅建試験過去問題 平成27年試験 問12

問12

賃貸人と賃借人との間で、建物につき、期間5年として借地借家法第38条に定める定期借家契約(以下「定期借家契約」という。)を締結する場合と、期間5年として定期借家契約ではない借家契約(以下「普通借家契約」という。)を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、借地借家法第40条に定める一時使用目的の賃貸借契約は考慮しないものとする。
  1. 賃借権の登記をしない限り賃借人は賃借権を第三者に対抗することができない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。
  2. 賃貸借契約開始から3年間は賃料を増額しない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。
  3. 期間満了により賃貸借契約が終了する際に賃借人は造作買取請求をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効であるが、普通借家契約では無効である。
  4. 賃貸人も賃借人も契約期間中の中途解約をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効であるが、普通借家契約では無効である。

正解 1

問題難易度
肢158.0%
肢27.9%
肢314.4%
肢419.7%

解説

  1. [正しい]。建物の賃貸借は、登記がなくても、建物の引渡しがあれば対抗要件を有します(借地借家法第31条)。建物賃借権の第三者対抗要件を登記のみに限る特約は、借地借家法の規定よりも賃借人に不利なので無効となります(借地借家法第37条)。
    第三十一条、第三十四条及び第三十五条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。
  2. 誤り。普通借家契約・定期借家契約のいずれも、当事者は借賃増減請求権を有します(借地借家法第32条1項)。いずれの契約形態でも賃料を一定期間増額しない旨の特約は有効です。一方、減額しない旨の特約については、定期借家契約では有効ですが普通借家契約では無効となります(借地借家法第38条9項)。
    建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
    第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
  3. 誤り。普通借家契約でも造作買取請求権を排除する特約は有効です。
    建物賃貸借が期間満了や解約申入れによって終了するとき、賃借人は、賃貸人の同意を得て建物に取り付けた造作を時価で買い取るよう賃貸人に請求することができます(造作買取請求権)。造作買取請求権の定めは任意規定なので、普通借家契約・定期借家契約のどちらでも、特約で造作買取請求権を放棄させることができます(借地借家法第33条借地借家法37条)。
    建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
  4. 誤り。記述とは逆で、普通借家契約では有効、定期借家契約では無効となります。
    賃貸借契約の原則として、期間の定めがある契約では、中途解約できる旨の特約をしたときを除いて契約期間内の解約は認められません(民法618条)。中途解約ができない旨の特約を定めることは可能ですが、原則をあえて明記したに過ぎないことになります。よって、普通借家契約では有効となります。
    定期借家契約においても原則として普通借家契約と同様に中途解約できません。しかし、床面積200㎡未満の居住用建物の場合で、転勤等のやむを得ない事情により中途解約をせざるを得ない場合は、解約の申入れをすることができるという例外があります(借地借家法第38条7項)。本肢の特約はこの権利を排除するものとなり、賃借人に不利となるので無効となります。
    第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
    Bは、①では期間内に解約する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができ、②では期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。R4-6-3
    賃貸借の期間を定めた場合であって当事者が期間内に解約する権利を留保していないとき、ケース①では賃借人側は期間内であっても1年前に予告することによって中途解約することができるのに対し、ケース②では賃貸人も賃借人もいつでも一方的に中途解約することができる。H26-11-4
    本件普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の留保がなければ賃借人は2年間は当該建物を借りる義務があるのに対し、本件定期建物賃貸借契約では、一定の要件を満たすのであれば、中途解約できる旨の留保がなくても賃借人は期間の途中で解約を申し入れることができる。H24-12-4
    契約期間を定めた場合、賃借人は、動産の賃貸借契約である場合は期間内に解約を行う権利を留保することができるが、建物の賃貸借契約である場合は当該権利を留保することはできない。H17-15-4
したがって正しい記述は[1]です。