宅建試験過去問題 平成24年試験 問12

問12

A所有の居住用建物(床面積50平方メートル)につき、Bが賃料月額10万円、期間を2年として、賃貸借契約(借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借、同法第39条に規定する取壊し予定の建物の賃貸借及び同法第40条に規定する一時使用目的の建物の賃貸借を除く。以下この問において「本件普通建物賃貸借契約」という。)を締結する場合と、同法第38条の定期建物賃貸借契約(以下この問において「本件定期建物賃貸借契約」という。)を締結する場合とにおける次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。
  1. 本件普通建物賃貸借契約でも、本件定期建物賃貸借契約でも、賃借人が造作買取請求権を行使できない旨の特約は、有効である。
  2. 本件普通建物賃貸借契約でも、本件定期建物賃貸借契約でも、賃料の改定についての特約が定められていない場合であって経済事情の変動により賃料が不相当になったときには、当事者は将来に向かって賃料の増減を請求することができる。
  3. 本件普通建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付しても当該特約は無効であるのに対し、本件定期建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付さえしておけば当該特約は有効となる。
  4. 本件普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の留保がなければ賃借人は2年間は当該建物を借りる義務があるのに対し、本件定期建物賃貸借契約では、一定の要件を満たすのであれば、中途解約できる旨の留保がなくても賃借人は期間の途中で解約を申し入れることができる。

正解 3

問題難易度
肢16.4%
肢215.3%
肢359.6%
肢418.7%

解説

  1. 正しい。造作買取請求権(借地借家法33条1項)は、借主保護のための強行規定の対象外なので、普通建物賃貸借と定期建物賃貸借のどちらでも造作買取請求権を行使しない特約を有効に定めることが可能です(借地借家法37条)。
    第三十一条、第三十四条及び第三十五条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。
    BがAの同意を得て建物に付加した造作がある場合であっても、本件契約終了時にAに対して借地借家法第33条の規定に基づく造作買取請求権を行使することはできない、という特約は無効である。R3⑫-12-4
    本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、造作買取請求に関する特約がない場合、期間満了で本件契約が終了するときに、Bは、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について買取請求をすることができる。R2⑩-12-4
    本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、造作買取請求権を排除する特約がない場合、Bの同意を得てAが甲建物に付加した造作については、期間満了で本件契約が終了するときに、Aは造作買取請求権を行使できる。H22-12-3
  2. 正しい。普通建物賃貸借契約でも定期建物賃貸借契約でも、経済事情の変動により賃料が不相当になった場合は、原則として賃料増減請求をすることができます(借地借家法32条1項)。賃料を増額しない特約がある場合にはその特約に従います(※賃料を減額しない旨の特約は無効)が、本肢では賃料改定に関する特約がないので、いずれの当事者も借賃の増減額を請求できます。
    建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
    当事者間において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不相当になったなどの事情が生じたとしても、この特約は有効である。R5-12-2
    本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。R2⑩-12-2
    本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料の改定に関する特約がない場合、契約期間中に賃料が不相当になったと考えたA又はBは、賃料の増減額請求権を行使できる。H22-12-4
    家賃が、近傍同種の建物の家賃に比較して不相当に高額になったときは、契約の条件にかかわらず、Bは、将来に向かって家賃の減額を請求することができる。H13-13-3
    AB間で、3年間は家賃を減額しない旨特に書面で合意した場合、その特約は効力を有しない。H13-13-4
  3. [誤り]。普通建物賃貸借契約における更新がない旨の特約は、借地借家法が定める法定更新の仕組みよりも賃借人に不利となるため無効となります(借地借家法26条1項借地借家法30条)。定期建物賃貸借契約の場合は、あらかじめ賃貸人が賃借人に対し、期間満了によって終了し更新がない旨の記載した書面を交付し又は電磁的方法で提供し、説明することにより特約が有効となります(借地借家法38条3項)。本肢は「交付さえしておけば」としている点が誤りです。
    建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
    この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
    前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
    本件契約に期間を2年とする旨の定めがあり、AもBも更新拒絶の通知をしなかったために本件契約が借地借家法に基づき更新される場合、更新後の期間について特段の合意がなければ、更新後の契約期間は2年となる。R3⑫-12-1
    AがBに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。R1-12-3
    AB間の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借でない場合、A及びBのいずれからも期間内に更新しない旨の通知又は条件変更しなければ更新しない旨の通知がなかったときは、当該賃貸借契約が更新され、その契約は期間の定めがないものとなる。H30-12-3
    AもBも相手方に対し、本件契約の期間満了前に何らの通知もしなかった場合、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。H28-12-1
    期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の1年前から6月前までの間に、更新しない旨の通知を出すのを失念したときは、賃貸人に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合でも、契約は期間満了により終了しない。H14-14-1
    期間の定めのある契約が法定更新された場合、その後の契約は従前と同一条件となり、従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。H14-14-3
  4. 正しい。期間の定めがある普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の特約(中途解約権の留保)がなければ貸主・借主のどちらも解約申入れをすることができないので、賃借人は2年間は当該建物を借りる義務があります(民法618条)。一方、定期建物賃貸借契約の賃借人には、床面積200㎡未満の居住用建物で一定のやむを得ない事情がある場合には、特約なしで中途解約できる権利が認められています(借地借家法38条7項)。
    当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
    第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
    Bは、①では期間内に解約する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができ、②では期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。R4-6-3
    賃貸人も賃借人も契約期間中の中途解約をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効であるが、普通借家契約では無効である。H27-12-4
    賃貸借の期間を定めた場合であって当事者が期間内に解約する権利を留保していないとき、ケース①では賃借人側は期間内であっても1年前に予告することによって中途解約することができるのに対し、ケース②では賃貸人も賃借人もいつでも一方的に中途解約することができる。H26-11-4
    契約期間を定めた場合、賃借人は、動産の賃貸借契約である場合は期間内に解約を行う権利を留保することができるが、建物の賃貸借契約である場合は当該権利を留保することはできない。H17-15-4
したがって誤っている記述は[3]です。