宅建試験過去問題 平成19年試験 問13

問13

Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. Bが甲土地を自分の土地であると判断して乙建物を建築していた場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。
  2. BがAとの間で甲土地の使用貸借契約を締結していた場合には、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。
  3. BがAとの間で甲土地の借地契約を締結しており、甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。
  4. BがAとの間で期間を定めずに甲土地の借地契約を締結している場合には、Cは、いつでも正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。

正解 4

問題難易度
肢16.6%
肢221.2%
肢37.9%
肢464.3%

解説

  1. 正しい。Bは所有の意思をもって他人の土地を占有しているので時効取得に当てはめて考えます。AからCへの譲渡が時効取得前であり、その後時効取得が成立した場合は、甲土地の所有権はBにあります。また、時効取得後に甲土地の譲渡があった場合には、BとCは対抗関係にあります。よって、Cは必ずしも所有権に基づく妨害排除請求権を行使できるわけではありません。
  2. 正しい。借地借家法で保護される借地権とは「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」です。使用貸借契約には借地借家法の適用がないので、Bは甲土地上に自己の名義で登記した建物を有していても第三者に対抗できません。使用貸借は第三者に対抗することができず、賃貸借のように所有権の移転に伴って貸主の地位が当然に移転することもありませんから、Bには甲土地を使用する権原がありません。よって、Cは甲土地の所有権に基づき、Bに対して建物収去・土地明渡請求をすることができます。
  3. 正しい。賃借人が対抗要件を備えた不動産が譲渡された場合には、貸主の地位は当然にその不動産の新所有者に移転します(民法605条の2第1項)。借地の購入者であるCは、Aの貸主たる地位を承継しますから、Bが更新を請求した場合には、Cが正当事由をもって異議を述べなければ借地契約は更新されます。借地契約が更新される限り、CはBに対して土地の明渡しを請求することができません(借地借家法5条1項借地借家法6条)。
    前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
    借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
    前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
    賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。R5-12-3
    DがAからこの建物を賃借し、引渡しを受けて適法に占有している場合、Bは、Dに対し、この建物の所有権を対抗でき、賃貸人たる地位を主張できる。H16-3-2
  4. [誤り]。借地契約の場合、期間の定めがなければ存続期間は30年となります(借地借家法3条)。借地上に自己の名義で登記した建物を有しているBは、対抗要件を備えているので、第三者であるCにも借地権を主張できます。よって、Cはこの存続期間満了前に解約を申し入れることはできません。
    借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
    賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①の期間は30年となり、ケース②の期間は15年となる。R1-11-2
    本件契約において借地権の存続期間を60年と定めても、公正証書によらなければ、その期間は30年となる。H30-11-3
    賃借権の存続期間を10年と定めた場合、本件契約が居住の用に供する建物を所有することを目的とするものであるときは存続期間が30年となるのに対し、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは存続期間は10年である。H29-11-2
    賃貸借の存続期間を60年と定めた場合には、ケース①では書面で契約を締結しなければ期間が30年となってしまうのに対し、ケース②では口頭による合意であっても期間は60年となる。H26-11-1
したがって誤っている記述は[4]です。