不法行為・事務管理(全16問中5問目)
No.5
次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。(判決文)
契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。(中略)上記のような場合の損害賠償請求権は不法行為により発生したものである(略)。
平成28年試験 問9
- 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。
- 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。
- 買主に対して債権を有している売主は、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を悪意で買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができない。
- 売主が信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった場合、買主は、売主に対して、この説明義務違反を理由に、売買契約上の債務不履行責任を追及することはできない。
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正解 2
問題難易度
肢116.5%
肢247.0%
肢315.9%
肢420.6%
肢247.0%
肢315.9%
肢420.6%
分野
科目:1 - 権利関係細目:11 - 不法行為・事務管理
解説
要点は、説明義務に違反して、相手に損害を与えた場合、損害を受けた側には(債務不履行ではなく)不法行為に基づく損害賠償権が生じるということです。
- 正しい。不法行為に基づく損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間または不法行為のあったときから20年間行使しないと時効消滅します(民法724条)。
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。(R3⑩-8-3)人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。(R2⑫-1-4)信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。(H28-9-2)CがBに対して本件建物の契約不適合に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが契約不適合の存在に気付いてから1年以内である。(H26-6-3)不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。(H26-8-2)不法行為による損害賠償の請求権の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。(H19-5-4)Dが、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。(H17-11-4)Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。(H12-8-3) - [誤り]。不法行為による損害賠償請求権は、不法行為の時から20年を経過した場合に、時効によって消滅します(民法724条)。
よって、10年で消滅するとしている本肢は誤りです。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。(R3⑩-8-3)人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。(R2⑫-1-4)信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。(H28-9-1)CがBに対して本件建物の契約不適合に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが契約不適合の存在に気付いてから1年以内である。(H26-6-3)不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。(H26-8-2)不法行為による損害賠償の請求権の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。(H19-5-4)Dが、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。(H17-11-4)Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。(H12-8-3) - 正しい。悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権とする相殺は禁止されています(民法509条1号)。
本肢では、不法行為が悪意によって行われたため買主側の損害賠償請求権と受働債権として相殺できません。次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。(H30-9-3)Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Aが被害者に対して売買代金債権を有していれば、被害者は不法行為に基づく損害賠償債権で売買代金債務を相殺することができる。(H18-11-3)AがBに対し悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合、Aは、このBに対する損害賠償請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。(H16-8-2) - 正しい。判例中の「債務の不履行による賠償責任を負うことはない…」の部分から、説明義務違反の場合、不法行為に基づく賠償責任を負うことはありますが、債務不履行による賠償責任は負わないとわかります。
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