宅建試験過去問題 平成18年試験 問11
問11
事業者Aが雇用している従業員Bが行った不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。- Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Bには被害者に対する不法行為に基づく損害賠償責任は発生しない。
- Bが営業時間中にA所有の自動車を運転して取引先に行く途中に前方不注意で人身事故を発生させても、Aに無断で自動車を運転していた場合、Aに使用者としての損害賠償責任は発生しない。
- Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Aが被害者に対して売買代金債権を有していれば、被害者は不法行為に基づく損害賠償債権で売買代金債務を相殺することができる。
- Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合、A自身は不法行為を行っていない以上、Aは負担した損害額の2分の1をBに対して求償できる。
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正解 3
問題難易度
肢111.0%
肢28.8%
肢363.6%
肢416.6%
肢28.8%
肢363.6%
肢416.6%
分野
科目:1 - 権利関係細目:11 - 不法行為・事務管理
解説
- 誤り。従業員Bと使用者Aは連帯して被害者に対する損害賠償責任を負います。従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合、使用者にも不法行為責任が成立することがありますが、使用者の責任が認められてもそれによって加害者の責任がなくなるわけではありません(民法715条1項)。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
- 誤り。営業時間内にA所有の自動車を運転していたBは外形的に業務中とみなされるため、Aにも使用者責任が発生します。会社の許可なく自動車を使用していたとしても、外から見て業務中であると見える場合には、業務の執行中とみなされます(最判昭39.2.4)。
自動車の販売等を業とする会社の販売課に勤務する被用者が、退社後映画見物をして帰宅のための最終列車に乗り遅れたため、私用に使うことが禁止されていた会社内規に違反して会社の自動車を運転し、帰宅する途中追突事故を起す等判示事実関係のもとにおいて他人に加えた損害は、右会社の「事業ノ執行ニ付キ」生じたものと解するのが相当である。
- [正しい]。被害者側から相殺を申し出るので、損害賠償請求権が自働債権、売買代金債権が受働債権となります。不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権として、つまり被害者から加害者に対して相殺をすることは可能です(民法509条)。
次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。(H30-9-3)買主に対して債権を有している売主は、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を悪意で買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができない。(H28-9-3)AがBに対し悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合、Aは、このBに対する損害賠償請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。(H16-8-2) - 誤り。従業員Bに対して2分の1を求償することはできません。
使用者は負担した損害賠償額を被用者に求償できます(民法715条3項)。ただし、求償できる範囲は、信義則上相当な範囲に限定されており、判例では4分の1を限度としています(最判昭51.7.8)。前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
使用者は、信義則上、右損害のうち四分の一を限度として、被用者に対し、賠償及び求償を請求しうるにすぎない。
Cは、使用者責任に基づき、Bに対して本件事故から生じた損害を賠償した場合、Dに対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。(H28-7-ウ)Aは、Dに対して事故によって受けたDの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、被用者であるBに対して求償権を行使することはできない。(H25-9-2)Aの使用者責任が認められてCに対して損害を賠償した場合には、AはBに対して求償することができるので、Bに資力があれば、最終的にはAはCに対して賠償した損害額の全額を常にBから回収することができる。(H24-9-3)Aは、Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Bに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。(H14-11-3)
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