所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中32問目)

No.32

A・B・Cが、持分を6・2・2の割合とする建物の共有をしている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成13年試験 問1
  1. Aが、B・Cに無断で、この建物を自己の所有としてDに売却した場合は、その売買契約は有効であるが、B・Cの持分については、他人の権利の売買となる。
  2. Bが、その持分に基づいて単独でこの建物全部を使用している場合は、A・Cは、Bに対して、理由を明らかにすることなく当然に、その明渡しを求めることができる。
  3. この建物をEが不法占有している場合には、B・Cは単独でEに明渡しを求めることはできないが、Aなら明渡しを求めることができる。
  4. 裁判による共有物の分割では、Aに建物を取得させ、AからB・Cに対して適正価格で賠償させる方法によることは許されない。

正解 1

問題難易度
肢167.2%
肢214.3%
肢37.4%
肢411.1%

解説

  1. [正しい]。共有者Aは自己の持分については自由に処分することができますが、他の共有者(B・C)の持分については処分する権利を持ちません。他人の権利の売買をするので他人物売買ということになります。他人物売買であっても契約自体は有効ですから、Aは、B・Cから持分を取得してDに移転する義務を負います(民法561条)。
    他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
    他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効であるが、当該他人がその売買契約を追認した場合にはその売買契約は有効となる。R6-1-4
    Bが購入した目的物が第三者Cの所有物であり、Aが売買契約締結時点でそのことを知らなかった場合には、Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる。R3⑫-4-3
    売買契約締結時には当該自動車がAの所有物ではなく、Aの父親の所有物であったとしても、AC間の売買契約は有効に成立する。H29-5-4
    Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aの責めに帰すべき事由により、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができる。H28-6-1
    Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。H28-6-2
    甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。H21-10-3
    買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。H17-9-1
    Bが購入した土地の一部を第三者Dが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して追完請求をすることができる。H16-10-3
  2. 誤り。共有者はその持分に応じて共有物の全部を使用することができます(民法249条1項)。Bの持分は2/10ですから、1年の2割の期間は建物全部を使えるといった具合です。Bは持分に基づく当然の使用収益をしているだけですから、Bの持分が少ないからと言って他の共有者が理由を明らかにせず当然に明渡しを求めることはできません(最判昭41.5.19)。
    各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
    共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。
    共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することができる。H30-10-4
    他の共有者との協議に基づかないで、自己の持分に基づいて1人で現に共有物全部を占有する共有者に対し、他の共有者は単独で自己に対する共有物の明渡しを請求することができる。H23-3-4
    共有者の協議に基づかないでAから甲土地の占有使用を承認されたDは、Aの持分に基づくものと認められる限度で甲土地を占有使用することができる。H19-4-1
  3. 誤り。共有物の不法占拠者に対する明渡し請求は共有物の保存行為とされ、各共有者が単独ですることができます(大判大10.6.13民法252条5項)。よって、過半数の持分をもつAでなくても、B又はCが単独でEに対して明渡しを求めることもできます。
    第三者が共有地を不法に占有している場合,各共有者は,単独で,当該第三者に対して,当該共有地の明渡しを請求することができる。
    各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
  4. 誤り。裁判所は、共有物を一人の単独所有とし、他の共有者に対してそれぞれの持分を現金で賠償させる方法(全面的価格賠償)で共有物を分割することもできます(民法258条2項)。
    裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
    一 共有物の現物を分割する方法
    二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
    共有物たる甲土地の分割について共有者間に協議が調わず、裁判所に分割請求がなされた場合、裁判所は、特段の事情があれば、甲土地全体をAの所有とし、AからB及びCに対し持分の価格を賠償させる方法により分割することができる。H18-4-3
したがって正しい記述は[1]です。