所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中28問目)
No.28
Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。平成15年試験 問3
- Cが、AB間の売買の事実を知らずにAから甲地を買い受け、所有権移転登記を得た場合、CはBに対して甲地の所有権を主張することができる。
- Dが、Bを欺き著しく高く売りつける目的で、Bが所有権移転登記を行っていないことに乗じて、Aから甲地を買い受け所有権移転登記を得た場合、DはBに対して甲地の所有権を主張することができない。
- Eが、甲地に抵当権を設定して登記を得た場合であっても、その後Bが所有権移転登記を得てしまえば、以後、EはBに対して甲地に抵当権を設定したことを主張することができない。
- AとFが、通謀して甲地をAからFに仮装譲渡し、所有権移転登記を得た場合、Bは登記がなくとも、Fに対して甲地の所有権を主張することができる。
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正解 3
問題難易度
肢18.3%
肢214.0%
肢369.9%
肢47.8%
肢214.0%
肢369.9%
肢47.8%
分野
科目:1 - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- 正しい。本肢では、AからBへ、AからCへと二重に譲渡されています。二重譲渡があった場合、先に登記を備えた方が所有権を主張できます(民法177条)。したがって、先に所有権移転登記を得たCは、Bに対して所有権を主張することができます。
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。(R1-1-1)①も②も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。(H29-10-4)Aが甲土地をBに売却する前にCにも売却していた場合、Cは所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。(H28-3-1)Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。(H24-6-3)CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。(H22-4-1)CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、甲土地の真の所有者はAであって、Bが各種の書類を偽造して自らに登記を移していた場合、Aは所有者であることをCに対して主張できる。(H20-2-1)Aを所有者とする甲土地につき、AがGとの間で10月1日に、Hとの間で10月10日に、それぞれ売買契約を締結した場合、G、H共に登記を備えていないときには、先に売買契約を締結したGがHに対して所有権を主張することができる。(H19-3-4) - 正しい。Dは、単にBが所有権移転登記を行っていないことを知っていた(悪意)に留まらず、それに乗じて悪さをしようとしています。このような背信的悪意者は、民法177条の第三者に当たりません(最判昭43.8.2)。よって、Bは登記なくしてDに甲土地の所有権を主張できます。
甲が乙から山林を買い受けて二三年余の間これを占有している事実を知つている丙が、甲の所有権取得登記がされていないのに乗じ、甲に高値で売りつけて利益を得る目的をもつて、右山林を乙から買い受けてその旨の登記を経た等判示の事情がある場合には、丙はいわゆる背信的悪意者として、甲の所有権取得について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらない。
Aから甲土地を購入したBは、所有権移転登記を備えていなかった。Eがこれに乗じてBに高値で売りつけて利益を得る目的でAから甲土地を購入し所有権移転登記を備えた場合、EはBに対して甲土地の所有権を主張することができない。(H28-3-3) - [誤り]。先に抵当権を設定しているEは、後に所有権移転登記を行ったBに対して対抗することができます。つまり、抵当権を実行できます。逆に、第三者の所有権移転登記後に抵当権が登記された場合、抵当権は実行できません。
- 正しい。実際に売買の意思がないのに、相手方と共謀して虚偽の売買契約をした場合、当該契約は「通謀虚偽表示」に該当し、無効となります(民法94条1項)。売買契約の効力は生じていないので、Bは登記なくしてFに甲地の所有権を主張できます。
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
AB間の売買契約が、AとBとで意を通じた仮装のものであったとしても、Aの売買契約の動機が債権者からの差押えを逃れるというものであることをBが知っていた場合には、AB間の売買契約は有効に成立する。(H19-1-2)Aが、強制執行を逃れるために、実際には売り渡す意思はないのにBと通謀して売買契約の締結をしたかのように装った場合、売買契約は無効である。(H16-1-2)BがAから所有権移転登記を受けていた場合でも、Aは、Bに対して、AB間の契約の無効を主張することができる。(H12-4-1)DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。(H12-4-3)
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