借地借家法(建物)(全28問中28問目)

No.28

Aが、B所有の建物を賃借している場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
平成12年試験 問12
  1. Aが、建物に自ら居住せず、Bの承諾を得て第三者に転貸し、居住させているときは、Aは、Bからその建物を買い受けた者に対し、賃借権を対抗することができない。
  2. Aが建物を第三者に転貸しようとする場合に、その転貸によりBに不利となるおそれがないにもかかわらず、Bが承諾を与えないときは、裁判所は、Aの申立てにより、Bの承諾に代わる許可を与えることができる。
  3. 建物の転貸借がされている場合(転借人C)において、AB間の賃貸借が正当の事由があり期間の満了によって終了するときは、Bは、Cにその旨通知しないと、Aに対しても、契約の終了を主張することができない。
  4. Bの建物がDからの借地上にあり、Bの借地権の存続期間の満了によりAが土地を明け渡すべきときは、Aが期間満了をその1年前までに知らなかった場合に限り、Aは、裁判所に対し土地の明渡しの猶予を請求することができる。

正解 4

問題難易度
肢18.1%
肢234.5%
肢313.9%
肢443.5%

解説

  1. 誤り。借地借家法では建物の引渡しがあったときに建物賃貸借の対抗要件を得るとしていますが、この建物の引渡しとは占有権の取得だと考えることができます。Aは第三者(転借人)を介して適法に建物を間接占有しているので、賃借権の対抗要件を備えています。よってAは、その後Bから建物の譲渡を受けた者に対して賃借権を対抗することができます(借地借家法31条)。
    建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
    Bが建物の引渡しを受けた後にAが建物をCに売却して建物所有者がCに変わった場合、Bは、契約①の場合ではCに対して賃借人であることを主張できるが、契約②の場合ではCに対して賃借人であることを主張できない。R6-12-1
    本件契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Aは、甲建物の引渡しを受けてから1年後に甲建物をBから購入したCに対して、賃借人であることを主張できる。R4-12-2
    本件契約期間中にBが甲建物をCに売却した場合、Aは甲建物に賃借権の登記をしていなくても、Cに対して甲建物の賃借権があることを主張することができる。H22-12-1
    Aが甲建物をDに売却した場合、甲建物の引渡しを受けて甲建物で居住しているBはDに対して賃借権を主張できるのに対し、Cは甲建物の引き渡しを受けて甲建物に居住していてもDに対して使用借権を主張することができない。H21-12-3
    Aが借入金の返済のために甲建物をFに任意に売却してFが新たな所有者となった場合であっても、Cは、FはAC間の賃貸借契約を承継したとして、Fに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。H20-4-4
    賃借人が賃借権の登記もなく建物の引渡しも受けていないうちに建物が売却されて所有者が変更すると、定期建物賃貸借契約の借主は賃借権を所有者に主張できないが、一時使用賃貸借の借主は賃借権を所有者に主張できる。H19-14-4
    借地権の期間満了に伴い、Bが建物買取請求権を適法に行使した場合、Aは、建物の賃貸借契約を建物の新たな所有者Cに対抗できる。H18-14-2
  2. 誤り。賃借権を譲渡したり、賃借物を第三者に転貸したりする際には賃貸人の承諾が必要です(民法612条)。借地権者が借地上の建物を第三者に譲渡したときには、その第三者への借権の譲渡・転貸について裁判所の許可を求めることができますが、建物の転貸借に関してはこのような規定はありません。
    賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
    CがBに無断でAから当該権原を譲り受け、甲土地を使用しているときは、①でも②でも、BはCに対して、甲土地の明渡しを請求することができる。R4-8-2
    BがAに無断でCに当該建物を転貸した場合であっても、Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除することができない。R2⑫-12-2
    BがAに無断で甲建物をCに転貸した場合には、転貸の事情のいかんにかかわらず、AはAB間の賃貸借契約を解除することができる。H25-11-1
    BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除できないのに対し、CがAに無断で甲建物を転貸した場合には、Aは使用貸借を解除できる。H21-12-1
    AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。H18-10-1
  3. 誤り。建物が転貸借されていて、建物の原賃貸借契約が期間満了または解約申入れによって終了する場合、原賃貸人は転借人に対してその旨の通知をしなければ、転借人に対して賃貸借契約の終了を対抗できません。転借人の保護のためです(借地借家法34条1項)。転借人Cに対抗できないというだけで、賃借人Aに対しては正当事由を備えた更新拒絶なので賃貸借契約の終了を対抗できます。
    転借人への通知後6月後に転貸借は終了するとされているので、期間満了と同時に転貸借契約を終了させたい場合には、その6月前までに転借人に対して通知を行う必要があります。
    建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
    Bが適法に甲建物をCに転貸していた場合、Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対抗することができない。R1-12-4
    Cが甲建物を適法に転借している場合、AB間の賃貸借契約が期間満了によって終了するときに、Cがその旨をBから聞かされていれば、AはCに対して、賃貸借契約の期間満了による終了を対抗することができる。H29-12-3
    賃貸人Aは、AB間の賃貸借契約が期間の満了によって終了するときは、転借人Cに対しその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対し対抗することができない。H16-13-2
  4. [正しい]。借地上の建物の賃借人が、借地権の終了を終了の1年前までに知らなかった場合、裁判所は借地上の建物の賃借人がそれを知った日から1年以内で土地の明渡しを猶予する期限を設定することができます。借地権の終了を知らなかった借地上の建物の賃借人を保護するためです(借地借家法35条1項)。
    よって、借地上にBの建物があり、その建物を賃借していたAが借地権の終了を知らなかった場合には、土地の明渡しにつき猶予を裁判所に請求することができます。
    借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
    事業用定期借地権の存続期間の満了によって、その借地上の建物の賃借人が土地を明け渡さなければならないときでも、建物の賃借人がその満了をその1年前までに知らなかったときは、建物の賃借人は土地の明渡しにつき相当の期限を裁判所から許与される場合がある。H22-11-4
    令和6年3月に、借地権がBの債務不履行により解除され、Aが建物を退去し土地を明け渡さなければならなくなったときは、Aが解除されることをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、Aの請求により、Aがそれを知った日から1年を超えない範囲内において土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。H18-14-3
    令和6年3月に、借地権が存続期間の満了により終了し、Aが建物を退去し土地を明け渡さなければならなくなったときは、Aが借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、Aの請求により、Aがそれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。H18-14-4
したがって正しい記述は[4]です。