借地借家法(建物)(全28問中1問目)

No.1

賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(以下この問において「契約①」という。)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(以下この問において「契約②」という。)を締結した場合とに関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
令和6年試験 問12
  1. Bが建物の引渡しを受けた後にAが建物をCに売却して建物所有者がCに変わった場合、Bは、契約①の場合ではCに対して賃借人であることを主張できるが、契約②の場合ではCに対して賃借人であることを主張できない。
  2. 契約期間中は賃料の改定を行わない旨の特約を契約において定めていても、契約期間中に賃料が不相当になったと考えるに至ったBは、契約①の場合も契約②の場合も、借地借家法第32条に基づく賃料減額請求をすることができる。
  3. Bが契約期間中に相続人なしで死亡した場合において、婚姻はしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dがあるときは、契約①の場合も契約②の場合も、Aに反対の意思表示をしないDは、建物の賃貸借契約に関し、Bの権利義務を承継する。
  4. 契約①の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、契約②の場合、書面で契約し、かつ、Aに正当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。

正解 3

問題難易度
肢18.0%
肢225.6%
肢351.6%
肢414.8%

解説

  1. 誤り。普通借家契約でも定期借家契約でも、建物引渡しが第三者対抗要件です。建物引渡しを受けた後なので、契約①・契約②のどちらでも新たな建物所有者に対して賃借権を対抗することができます(借地借家法31条)。
    建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
    本件契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Aは、甲建物の引渡しを受けてから1年後に甲建物をBから購入したCに対して、賃借人であることを主張できる。R4-12-2
    本件契約期間中にBが甲建物をCに売却した場合、Aは甲建物に賃借権の登記をしていなくても、Cに対して甲建物の賃借権があることを主張することができる。H22-12-1
    Aが甲建物をDに売却した場合、甲建物の引渡しを受けて甲建物で居住しているBはDに対して賃借権を主張できるのに対し、Cは甲建物の引き渡しを受けて甲建物に居住していてもDに対して使用借権を主張することができない。H21-12-3
    Aが借入金の返済のために甲建物をFに任意に売却してFが新たな所有者となった場合であっても、Cは、FはAC間の賃貸借契約を承継したとして、Fに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。H20-4-4
    賃借人が賃借権の登記もなく建物の引渡しも受けていないうちに建物が売却されて所有者が変更すると、定期建物賃貸借契約の借主は賃借権を所有者に主張できないが、一時使用賃貸借の借主は賃借権を所有者に主張できる。H19-14-4
    借地権の期間満了に伴い、Bが建物買取請求権を適法に行使した場合、Aは、建物の賃貸借契約を建物の新たな所有者Cに対抗できる。H18-14-2
    Aが、建物に自ら居住せず、Bの承諾を得て第三者に転貸し、居住させているときは、Aは、Bからその建物を買い受けた者に対し、賃借権を対抗することができない。H12-12-1
  2. 誤り。契約①の定期借家契約では、賃料改定に関する定めがある場合、賃料増減額請求をすることができません(借地借家法38条9項)。これに対して、契約②の普通借家契約では賃料減額請求を排除する特約は無効となるので、賃料に関する特約があっても賃料減額請求をすることができます(借地借家法32条1項)。
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    第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
    建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
    AB間の賃貸借契約に賃料の改定について特約がある場合には、経済事情の変動によってBのAに対する賃料が不相当となっても、BはAに対して借地借家法第32条第1項に基づく賃料の減額請求をすることはできない。H25-11-4
  3. [正しい]。賃借人が死亡して相続人がいない場合、その賃借人と同居していた事実上の夫婦関係や養親・養子関係にあった者は、賃借人の死亡から1カ月以内に反対の意思を表示しない限り、賃借人の権利義務を承継します(借地借家法36条1項)。これは普通借家契約でも定期借家契約でも同様です。
    賃借人Bに相続人はいないので、契約①・契約②ともに事実婚関係にあった同居者DがBの権利義務を承継することになります。
    居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
    Bが相続人なしに死亡した場合、Bと婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dは、Bが相続人なしに死亡したことを知った後1月以内にAに反対の意思表示をしない限り、賃借人としてのBの権利義務を承継する。R2⑫-12-4
  4. 誤り。定期借家契約では書面(又は電磁的記録)での契約が必要です(借地借家法38条1項)。一方、普通借家契約では特に契約方式は定められておらず、民法の原則どおり意思の合致のみで成立します。
    契約①は書面であれば更新がない旨を定められるので、公正証書に限るとする点が間違いです。契約②は書面での契約であるなしにかかわらず、賃貸人が更新請求を拒絶するには正当事由が必要なので、この点が間違っています。
    期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
    定期建物賃貸借契約を締結するには、公正証書による等書面又は電磁的記録によらなければならない。H26-12-1
    賃貸人は、建物を一定の期間自己の生活の本拠として使用することが困難であり、かつ、その期間経過後はその本拠として使用することになることが明らかな場合に限って、定期建物賃貸借契約を締結することができる。H20-14-1
    定期建物賃貸借契約は書面又は電磁的記録によって契約を締結しなければ有効とはならないが、一時使用賃貸借契約は口頭で契約しても有効となる。H19-14-1
    定期借家契約は、公正証書によってしなければ、効力を生じない。H15-14-2
したがって正しい記述は[3]です。