宅建試験過去問題 平成28年試験 問5(改題)

問5

Aが、Bに対する債権をCに譲渡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. AのBに対する債権に譲渡禁止の特約があり、Cがその特約の存在を知りながら債権の譲渡を受けていれば、Cからさらに債権の譲渡を受けた転得者Dがその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がない場合でも、BはDに対して債務の履行を拒むことができる。
  2. AがBに債権譲渡の通知を発送し、その通知がBに到達していなかった場合には、Bが承諾をしても、BはCに対して当該債権に係る債務の弁済を拒否することができる。
  3. AのBに対する債権に譲渡禁止の特約がなく、Cに譲渡された時点ではまだ発生していない将来の取引に関する債権であった場合、その取引の種類、金額、期間などにより当該債権が特定されていたときは、特段の事情がない限り、AからCへの債権譲渡は有効である。
  4. Aに対し弁済期が到来した貸金債権を有していたBは、Aから債権譲渡の通知を受けるまでに承諾をせず、相殺の意思表示もしていなかった。その後、Bは、Cから支払請求を受けた際に、Aに対する貸金債権との相殺の意思表示をしたとしても、Cに対抗することはできない。

正解 3

問題難易度
肢18.8%
肢28.2%
肢369.2%
肢413.8%

解説

  1. 誤り。債権に譲渡禁止の特約があり、譲受人がその特約について悪意であっても債権譲渡自体は有効となります(民法466条2項)。このとき、債務者が譲受人や転得者に対して債務の履行を拒むことができるかどうかは、譲受人や転得者ごとの主観によります。本肢のケースに当てはめると、譲受人Cは悪意なので債務者BはCに対する債務の履行を拒めますが、転得者Dは善意・無重過失なので債務者BはDに対する債務の履行を拒むことはできません(民法466条3項)。
    当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
    前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
    譲渡制限の意思表示がされた債権が譲渡された場合、当該債権譲渡の効力は妨げられないが、債務者は、その債権の全額に相当する金銭を供託することができる。R3⑩-6-1
    譲渡禁止特約のある債権の譲渡を受けた第三者は、その特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失があるときでも、当該債権を取得することができる。H30-7-1
    譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者は、債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかである等の事情があっても、その特約の存在を理由に、譲渡の無効を主張することができない。H30-7-3
    AB間の代金債権には譲渡禁止特約があり、Cがその特約の存在を知らないことにつき重大な過失がある場合でも、Cはこの代金債権を取得することができる。H23-5-1
    貸付金債権に譲渡禁止特約が付いている場合で、Cが譲渡禁止特約の存在を知っているときでも、AからCへの債権譲渡は有効である。H15-8-1
  2. 誤り。債務者が債権譲渡を承諾した場合には、債権の譲受人は債務者に対して債権譲渡を対抗できます。Bは承諾をしたのですから、BはCに対して債務の弁済を拒否することができません(民法467条1項)。
    債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
    Bが債権譲渡を承諾しない場合、CがBに対して債権譲渡を通知するだけでは、CはBに対して自分が債権者であることを主張することができない。H15-8-2
    譲渡通知は、AがBに対してしなければならないが、CがAの代理人としてBに対して通知しても差し支えない。H12-6-1
  3. [正しい]。現時点で発生していない債権(将来債権)であっても内容が特定しうるものであれば譲渡可能です(民法466条の6第1項)。本肢では「取引の種類、金額、期間などにより当該債権が特定されていたとき」の債権譲渡ですので有効となります。
    債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
    債権が譲渡された場合、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、その後に発生した債権を取得できない。R3⑩-6-2
  4. 誤り。債務者は、債権譲渡の対抗要件具備時(譲渡人や譲受人が債権譲渡の対抗要件を備えた時)までに生じた事由をもって譲受人に対抗することができます(民法468条1項)。
    Aに対する貸付債権は譲渡通知前に生じているので、BはCに対して相殺の抗弁を対抗することができます。
    債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
    BがAに対して期限が到来した1,000万円の貸金債権を有していても、AがBに対して確定日付のある譲渡通知をした場合には、BはCに譲渡された代金債権の請求に対して貸金債権による相殺を主張することができない。H23-5-3
    AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知したときは、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務を相殺することはできない。H23-6-4
    Bが、既にAに弁済していたのに、AのCに対する譲渡を異議を留めないで承諾した場合、Bは、弁済したことをCにもAにも主張することができない。H12-6-4
したがって正しい記述は[3]です。