宅建試験過去問題 平成30年試験 問7(改題)

問7

債権譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. 譲渡禁止特約のある債権の譲渡を受けた第三者は、その特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失があるときでも、当該債権を取得することができる。
  2. 債権の譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っていれば、さらにその債権を譲り受けた転得者がその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がなかったとしても、債務者はその転得者に対して、その債務の履行を拒むことができる。
  3. 譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者は、債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかである等の事情があっても、その特約の存在を理由に、譲渡の無効を主張することができない。
  4. 譲渡禁止特約のある債権をもって質権の目的とした場合において、質権者がその特約の存在について悪意であるときでも、当該質権設定は有効となる。

正解 2

問題難易度
肢118.0%
肢254.0%
肢315.0%
肢413.0%

解説

  1. 正しい。債権に譲渡禁止特約がある場合でも、債権の譲渡はその効力を妨げられません。譲受人の善意や過失の有無にかかわらず債権の譲渡は有効となるので、当該債権を取得することができます(民法466条2項)。
    譲渡制限の意思表示がされた債権が譲渡された場合、当該債権譲渡の効力は妨げられないが、債務者は、その債権の全額に相当する金銭を供託することができる。R3⑩-6-1
    譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者は、債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかである等の事情があっても、その特約の存在を理由に、譲渡の無効を主張することができない。H30-7-3
    AのBに対する債権に譲渡禁止の特約があり、Cがその特約の存在を知りながら債権の譲渡を受けていれば、Cからさらに債権の譲渡を受けた転得者Dがその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がない場合でも、BはDに対して債務の履行を拒むことができる。H28-5-1
    AB間の代金債権には譲渡禁止特約があり、Cがその特約の存在を知らないことにつき重大な過失がある場合でも、Cはこの代金債権を取得することができる。H23-5-1
    貸付金債権に譲渡禁止特約が付いている場合で、Cが譲渡禁止特約の存在を知っているときでも、AからCへの債権譲渡は有効である。H15-8-1
  2. [誤り]。債務者が、債権の譲受人や転得者に対して債務の履行を拒むことができるかどうかは、譲受人や転得者の個々の主観によって異なります。本肢では、譲受人は悪意ですが、転得者は善意無重過失なので、債務者は転得者に対して債務の履行を拒むことはできません(民法466条3項)。
    譲渡制限の意思表示がされた債権の譲受人が、その意思表示がされていたことを知っていたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって譲受人に対抗することができる。R3⑩-6-3
  3. 正しい。債権に譲渡禁止特約がある場合でも、債権の譲渡はその効力を妨げられません。したがって、債権譲渡は有効となります。譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者は、債務者の事情にかかわらず、特約の存在を理由に無効を主張することはできません(民法466条2項)。
    譲渡制限の意思表示がされた債権が譲渡された場合、当該債権譲渡の効力は妨げられないが、債務者は、その債権の全額に相当する金銭を供託することができる。R3⑩-6-1
    譲渡禁止特約のある債権の譲渡を受けた第三者は、その特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失があるときでも、当該債権を取得することができる。H30-7-1
    AのBに対する債権に譲渡禁止の特約があり、Cがその特約の存在を知りながら債権の譲渡を受けていれば、Cからさらに債権の譲渡を受けた転得者Dがその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がない場合でも、BはDに対して債務の履行を拒むことができる。H28-5-1
    AB間の代金債権には譲渡禁止特約があり、Cがその特約の存在を知らないことにつき重大な過失がある場合でも、Cはこの代金債権を取得することができる。H23-5-1
    貸付金債権に譲渡禁止特約が付いている場合で、Cが譲渡禁止特約の存在を知っているときでも、AからCへの債権譲渡は有効である。H15-8-1
  4. 正しい。譲渡禁止特約のある債権を質権の目的とするときは、質権者に債権を引き渡すことになるので、債権譲渡と同じように扱うという判例があります(大判大13.6.12)。譲渡禁止特約が付いていても債権の譲渡は有効ですので、質権者の善意・悪意にかかわらず当該質権設定も有効となります(民法466条2項)。
したがって誤っている記述は[2]です。