不法行為・事務管理 (全14問中13問目)

No.13

甲建物の占有者である(所有者ではない。)Aは、甲建物の壁が今にも剥離(はくり)しそうであると分かっていたのに、甲建物の所有者に通知せず、そのまま放置するなど、損害発生の防止のため法律上要求される注意を行わなかった。そのために、壁が剥離して通行人Bが死亡した。この場合、Bの相続人からの不法行為に基づく損害賠償請求に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
平成13年試験 問10
  1. Bが即死した場合、B本人の損害賠償請求権は観念できず、その請求権の相続による相続人への承継はない。
  2. Bに配偶者と子がいた場合は、その配偶者と子は、Bの死亡による自己の精神上の苦痛に関し、自己の権利として損害賠償請求権を有する。
  3. Bの相続人は、Aに対しては損害賠償請求ができるが、甲建物の所有者に対しては、損害賠償請求ができない。
  4. 壁の剥離につき、壁の施工業者にも一部責任がある場合には、Aは、その施工業者に対して求償権を行使することができる。

正解 1

問題難易度
肢171.3%
肢23.3%
肢321.5%
肢43.9%

解説

  1. [誤り]。即死した本人は損害賠償請求権を取得するとされており、その損害賠償請求権は遺族に相続されます(大判大15.2.16)。この考え方は大きな傷害を負って間もなく死亡した者と、即死した者とのバランスを考慮したものだと解されています。
  2. 正しい。被害者の近親者等一定の身分にあるものは、自らの生命が侵害されていない場合であっても、被害者の死亡等によって生じた自己の精神上の苦痛に関し、自己の権利として損害賠償請求権を有します(民法711条)。被害者の配偶者と子は当然に近親者の範囲に含まれるので、損害賠償請求権(慰謝料請求権)を取得します。
    他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
  3. 正しい。本問は、土地の工作物によって生じた損害なので不法行為の1つである「工作物責任」の事例です。工作物責任で責任を負う人物は、その工作物の占有者に工作物の保存・設置に関して瑕疵があったかどうかで決まります(民法717条1項)。
    占有者に瑕疵あり
    占有者が損害賠償責任を負う
    占有者に瑕疵なし(損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき)
    所有者が損害賠償責任を負う
    本問では、危険な状態を放置している占有者Aに建物保存上の瑕疵があるので、Aが損害賠償責任を負います。よって、建物の所有者に対しては損害賠償請求ができません。
    土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
  4. 正しい。「工作物責任」について、その損害の責任を負うべき者が他にいるときは、損害賠償責任を負った占有者または所有者はその者に求償できます(民法717条3項)。肢3の通り、被害者への賠償責任はAにありますが、壁の剥離につき、壁の施工業者にも一部責任がある場合には、占有者Aは施工業者に対して求償権を行使することができます。
    前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
したがって誤っている記述は[1]です。