不動産登記法(全27問中5問目)

No.5

不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、正しいものはどれか。
令和3年10月試験 問14
  1. 所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がある場合においても、所有権の登記名義人が単独で申請することができる。
  2. 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によって消滅する。
  3. 法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
  4. 信託の登記は、受託者が単独で申請することができない。

正解 3

問題難易度
肢112.9%
肢218.7%
肢356.2%
肢412.2%

解説

  1. 誤り。所有権の登記の抹消を登記名義人が単独ですることができるのは、所有権の保存登記のみである(つまり移転登記がない)ときに限られます(不動産登記法77条)。登記名義人により移転登記が抹消されると、登記名義人が前の所有者に戻ることになります。抹消により所有権を失う者と所有権を得る者が生じるので、原則どおり共同申請となります。
    所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請することができる。
    所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記の有無にかかわらず、現在の所有権の登記名義人が単独で申請することができる。H17-16-4
  2. 誤り。委任契約による代理権は、本人の死亡によって消滅するのが民法の原則です(民法101条1項1号)。しかし、登記申請者本人が死亡した場合であっても、登記申請者の委任を受けた代理人(司法書士や土地家屋調査士などの資格代理人)の権限は消滅しないことになっています(不動産登記法17条1号)。委任者の相続人から再度委任を受ける手間を省き、一度開始した登記手続きを迅速に進めるためです。
    代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
    一 本人の死亡
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。
    一 本人の死亡
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。R1-14-4
    代理人の意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、本人の選択に従い、本人又は代理人のいずれかについて決する。H26-2-エ
    法人について即時取得の成否が問題となる場合、当該法人の代表機関が代理人によって取引を行ったのであれば、即時取得の要件である善意・無過失の有無は、当該代理人を基準にして判断される。H24-2-2
    登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。H24-14-1
    Bは、Aに対してCとの間の売買契約を委任したが、Aが、DをCと勘違いした要素の錯誤によってDとの間で契約した場合、Aに重大な過失がなければ、この契約は取り消すことができる。H14-2-1
    委任による登記申請の代理権は、本人の死亡によって消滅する。H14-15-2
  3. [正しい]。法人が合併したことによる権利の移転の登記は、登記権利者が単独ですることができます。合併により登記義務者となる法人が消滅しているためです(不動産登記法63条2項)。
    相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
    相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。H17-16-2
    登記の申請は、登記権利者及び登記義務者が共同してするのが原則であるが、相続による登記は、登記権利者のみで申請することができる。H14-15-3
  4. 誤り。信託は、自分の持っている財産を別の人に託して(所有者を名義上移して)運用・管理・処分してもらう契約です。信託財産に不動産が含まれるときには、分別管理及び信託契約の内容の記録のために、①信託に伴う不動産の権利の移転等の登記と同時に、②信託の登記を行わなければなりません。
    ①信託に伴う権利の移転等の登記は共同申請ですが、受託者が申請する②信託の登記は、重ねて共同申請する負担を軽減するため受託者(財産を預かる人)が単独で申請することができます(不動産登記法98条1項・2項)。
    信託の登記の申請は、当該信託に係る権利の保存、設定、移転又は変更の登記の申請と同時にしなければならない。
    2 信託の登記は、受託者が単独で申請することができる。
したがって正しい記述は[3]です。