不動産登記法(全26問中6問目)

No.6

不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、正しいものはどれか。
令和2年10月試験 問14
  1. 敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければ、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができない。
  2. 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合であっても、その承諾を得ることなく、申請することができる。
  3. 債権者Aが債務者Bに代位して所有権の登記名義人CからBへの所有権の移転の登記を申請した場合において、当該登記を完了したときは、登記官は、Aに対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。
  4. 配偶者居住権は、登記することができる権利に含まれない。

正解 1

問題難易度
肢147.9%
肢214.3%
肢321.9%
肢415.9%

解説

  1. [正しい]。本来は所有権保存登記のない建物の取得があった場合、表題部所有者に所有権保存登記をしてもらった後、共同で所有権移転登記をする手順となります。しかし、原始取得者以外に取得されることを前提とする区分建物では、登記手続きを1回で済ませるために、表題部所有者から所有権を取得した者が直接所有権保存登記を申請することができます。この場合、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければなりません(不動産登記法74条2項)。
    区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
    区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。R5-14-4
    区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。H28-14-4
    敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得ることなく、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができる。H25-14-3
    1棟の建物を区分した建物の登記簿の表題部に記載された所有者から所有権を取得したことを証明できる者は、直接自己名義に当該建物の所有権保存の登記を申請することができる。H12-14-4
  2. 誤り。所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合は、その承諾があるときでなければ申請することができません(不動産登記法109条1項)。例えば、A→Bに所有権移転の仮登記がなされ、その後、A→Cへ譲渡と所有権移転登記があった場合、仮登記に基づく本登記により権利を失うCの承諾が必要となります。所有権に関するものに限り利害関係者の承諾が必要であり、抵当権その他所有権以外の権利の本登記については、利害関係を有する第三者がいても承諾は不要です。
    所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
    所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。H25-14-4
    所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。H20-16-1
  3. 誤り。C→B→Aと不動産が転々譲渡され、登記がまだCにある場面を想像しましょう。このとき、BはCに対して所有権に基づく移転登記請求権がありますが、AはCに対して直接の請求権はないように見えます。しかし、不動産のように登記がなければ対抗要件を備えられない財産を譲渡された者は、譲渡人がその権利を行使しない場合には、債権者代位権に基づき、譲渡人Bの前主Cに対する移転登記請求権を代位行使することができます(民法423条の7)。
    登記識別情報は「申請人自らが登記名義人となる場合」に交付されますが、代位による登記申請では申請者と登記名義人が異なるので、本肢の場合、申請者であるAにも登記名義人であるBにも登記識別情報が通知されることはありません(不動産登記法21条)。
    登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。この場合においては、前三条の規定を準用する。
    登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。
    登記官は、登記の申請に基づいて登記を完了したときは、申請人に対し、登記完了証を交付することにより、登記が完了した旨を通知しなければならない。この場合において、申請人が二人以上あるときは、その一人(登記権利者及び登記義務者が申請人であるときは、登記権利者及び登記義務者の各一人)に通知すれば足りる。
  4. 誤り。配偶者居住権は2020年の民法改正により創設された権利で、相続対象となった建物の価値を所有権と居住権に分け、所有権を子が、居住権を配偶者が取得することで、配偶者が終身その自宅に無償で住み続けられる仕組みです(民法1028条)。建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負うと規定されているように、配偶者居住権は登記可能な権利です(民法1031条不動産登記法3条9号)。
    居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
    登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第二項及び第百五条第一号において同じ。)についてする。

    九 配偶者居住権
    Bが死亡した後、Aがすべての財産を第三者Gに遺贈する旨の遺言を残して死亡した場合、FはGに対して遺留分を主張することができない。H24-10-4
したがって正しい記述は[1]です。