所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中15問目)
No.15
A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。平成24年試験 問6
- 甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。
- 甲土地の賃借人であるDが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したEは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。
- Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。
- Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。
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正解 4
問題難易度
肢17.6%
肢214.9%
肢39.1%
肢468.4%
肢214.9%
肢39.1%
肢468.4%
分野
科目:1 - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- 誤り。時効完成前にAから甲土地を購入し、所有権移転登記を備えたCは、Bとは当事者の関係になります。よって、Bは登記なくCに対して時効取得を主張することができます(最判昭41.11.22)。
不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。
AがCに対して甲土地を売却し、Cが所有権移転登記を備えた後にBの取得時効が完成した場合には、Bは登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。(R5-6-ア)Bが甲土地の所有権を時効取得した場合、Bは登記を備えなければ、その所有権を時効完成時において所有者であったCに対抗することはできない。(R4-10-4)第三者のなした登記後に時効が完成して不動産の所有権を取得した者は、当該第三者に対して、登記を備えなくても、時効取得をもって対抗することができる。(R3⑫-6-3)Bが甲土地の所有権移転登記を備えた後に甲土地につき取得時効が完成したFは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。(R1-1-4)Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、Bは、Cに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。(H27-4-3)Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。(H22-4-3) - 誤り。賃貸物の譲受人が、対抗要件を備えて賃借人に対して賃貸人たる地位を主張するには、登記が必要です(民法605条の2第3項)。賃借人は、元所有者と新所有者のどちらに賃料を支払ったらよいか判断できないため、登記を基準にすることで賃料の二重支払いを防ぐ目的があります。
第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
- 誤り。不動産の物権を第三者に対抗するには登記が必要ですから、二重譲渡があった場合には、先に登記をした方が他方に対して権利を主張できます。よって、Gの売買契約がFより先だったとしても、登記がなければFに対し所有権を主張することはできません(民法177条)。
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。(R1-1-1)①も②も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。(H29-10-4)Aが甲土地をBに売却する前にCにも売却していた場合、Cは所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。(H28-3-1)CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。(H22-4-1)CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、甲土地の真の所有者はAであって、Bが各種の書類を偽造して自らに登記を移していた場合、Aは所有者であることをCに対して主張できる。(H20-2-1)Aを所有者とする甲土地につき、AがGとの間で10月1日に、Hとの間で10月10日に、それぞれ売買契約を締結した場合、G、H共に登記を備えていないときには、先に売買契約を締結したGがHに対して所有権を主張することができる。(H19-3-4)Cが、AB間の売買の事実を知らずにAから甲地を買い受け、所有権移転登記を得た場合、CはBに対して甲地の所有権を主張することができる。(H15-3-1) - [正しい]。背信的悪意者(妨害や嫌がらせで悪事を働いた者)は民法177条の第三者に当たりませんが、背信的悪意者からの転得者は、その者自身が背信的悪意者に該当しない限り、当然には背信的悪意者には当たりません。よって、HとJは対抗関係になり、先に登記を備えたJが所有権を主張できます(最判平8.10.29)。
所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、甲から丙が当該不動産を二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる。
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