所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中12問目)
No.12
AがA所有の甲土地をBに売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。平成28年試験 問3
- Aが甲土地をBに売却する前にCにも売却していた場合、Cは所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。
- AがBの詐欺を理由に甲土地の売却の意思表示を取り消しても、取消しより前にBが甲土地をDに売却し、Dが所有権移転登記を備えた場合には、DがBの詐欺の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはDに対して甲土地の所有権を主張することができない。
- Aから甲土地を購入したBは、所有権移転登記を備えていなかった。Eがこれに乗じてBに高値で売りつけて利益を得る目的でAから甲土地を購入し所有権移転登記を備えた場合、EはBに対して甲土地の所有権を主張することができない。
- AB間の売買契約が、Bの意思表示の動機に錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。
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正解 3
問題難易度
肢16.7%
肢216.9%
肢358.5%
肢417.9%
肢216.9%
肢358.5%
肢417.9%
分野
科目:1 - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- 誤り。不動産の権利は、登記なく第三者に対抗をすることはできません(民法177条)。本肢のような二重譲渡の場合は、先に登記を備えた方が所有権を主張できます。よって、登記のないCは、Bに対抗をすることはできません。
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。(R1-1-1)①も②も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。(H29-10-4)Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。(H24-6-3)CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。(H22-4-1)CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、甲土地の真の所有者はAであって、Bが各種の書類を偽造して自らに登記を移していた場合、Aは所有者であることをCに対して主張できる。(H20-2-1)Aを所有者とする甲土地につき、AがGとの間で10月1日に、Hとの間で10月10日に、それぞれ売買契約を締結した場合、G、H共に登記を備えていないときには、先に売買契約を締結したGがHに対して所有権を主張することができる。(H19-3-4)Cが、AB間の売買の事実を知らずにAから甲地を買い受け、所有権移転登記を得た場合、CはBに対して甲地の所有権を主張することができる。(H15-3-1) - 誤り。詐欺による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができません(民法96条3項)。逆を言えば第三者が善意無過失でなければ取消しを主張できるということです。この「第三者」とは、Dのように取消し前に取引関係に現れた者のことを言います。
よって、第三者であるDがBの詐欺の事実を知っていれば(悪意であれば)、AはDに対して土地の所有権を主張することができます。前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
- [正しい]。Eは背信的悪意者に該当し、先に登記を備えていたとしても、不動産の所有権を主張することができません。判例は、民法177条の第三者には背信的悪意者が含まれないことを示しています(最判昭43.8.2)。
甲が乙から山林を買い受けて二三年余の間これを占有している事実を知つている丙が、甲の所有権取得登記がされていないのに乗じ、甲に高値で売りつけて利益を得る目的をもつて、右山林を乙から買い受けてその旨の登記を経た等判示の事情がある場合には、丙はいわゆる背信的悪意者として、甲の所有権取得について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらない。
Dが、Bを欺き著しく高く売りつける目的で、Bが所有権移転登記を行っていないことに乗じて、Aから甲地を買い受け所有権移転登記を得た場合、DはBに対して甲地の所有権を主張することができない。(H15-3-2) - 誤り。錯誤による取消しを主張できることができるのは、重大な過失なく意思表示したもの(表意者)に限られます(民法95条1項最判昭40.9.10)。Bに取消しの意思がない場合には、意思表示の相手方であるAも錯誤を理由に取り消すことができません。なお「動機の錯誤」で取消しを主張できるのは、相手に動機の明示・黙示があった場合のみとされています(民法95条2項)。
意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されない。
前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
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