宅建試験過去問題 平成17年試験 問2(改題)

問2

AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。この場合、次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. 錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、この売却の意思表示を取り消すことはできない。
  2. 錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機に関するものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合であっても、この売却の意思表示を取り消すことはできない。
  3. 錯誤を理由としてこの売却の意思表示が取消しとなる場合、意思表示者であるAに重過失があるときは、原則として、Aは自ら取り消すことはできない。
  4. 錯誤を理由としてこの売却の意思表示が取消しとなる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示を取り消すことができる。

正解 3

問題難易度
肢15.1%
肢25.5%
肢382.8%
肢46.6%

解説

  1. 誤り。錯誤の内容が重要であり「要素の錯誤」であるときは、表意者に重大な過失がある場合を除き、表意者はその意思表示を取り消すことができます(民法95条1項)。
    意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
  2. 誤り。動機の錯誤であっても、当該動機が表示され意思表示の内容となっている場合は取り消すことができます(民法95条2項)。
    前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
  3. [正しい]。表意者に重大な過失があるときは、①相手方が悪意・重過失、または②相手方が同一の錯誤に陥っていた場合を除いて錯誤取り消しを主張することはできません(民法95条3項)。
    錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
    一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
    二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
  4. 誤り。錯誤による取消しは表意者を保護する主旨があるので、取消しの意思表示ができるのは表意者に限定されます。相手方がこれを行使することはできません(通説)。また、判例では表意者自身に取消しを主張する意思がないときは、第三者も取り消しを主張できないとしています(最判昭40.9.10)。
    表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されない。
したがって正しい記述は[3]です。