差し押さえの自働債権

令和7年度 賃貸不動産経営管理士
てりてりさん
(No.1)
Aは、B所有の建物を賃借し、毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し、敷金は賃貸借終了後明渡し完了後にBがAに支払うと約定された。AのBに対するこの賃料債務に関する相さいについての次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいか否かを答えよ。
AがBに対してこの賃貸借契約締結以前から貸付金債権を有しており、その弁済期が令7年8月31日に到来する場合、同年8月初日にBのAに対するこの賃料債権に対する差押があったとしても、Aは、同年8月31日に、このBに対する貸付金債権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相さいすることができる。
平成16年試験 問8 肢4
答え 正

相さいの初歩的な質問で申し訳ありません。
差し押さえ前に相さい適状だったらできると認識していましたが、違うのでしょうか。この場合、貸付金債権は弁済期到来していないので、できないと思いました。
また、消滅してしまった債権、債務なども相さいできる場合が、こんがらがっていて、よく分からなくなりました。
自働債権は弁済期到来していたら、受動債権が弁済期でなくても、相さいできると認識しております。
どなたかご教授ください。
2025.06.08 01:19
勉強嫌いの行政書士さん
(No.2)
相殺の条文は、505条~512条の2までと少ないです。
理解したいなら条文を一読することをお勧めします。

>差し押さえ前に相さい適状だったらできる
 正しいです。505条です。

>消滅してしまった債権、債務なども相さいできる
 正しいです。508条です。

>自働債権は弁済期到来していたら、受動債権が弁済期でなくても、相さいできる
 正しいです。136条です。

>AがBに対してこの賃貸借契約締結以前から貸付金債権を有しており、
>賃料債権に対する差押があったとしても、相さいすることができる。
この問題は、511条の反対解釈です。
511条は、本差の受動債権禁止の規定である。
それを踏まえて、本差しの自働債権の規定は存在しない。
よって、本差があっても、自働債権の期限の利益の放棄が136条が有効になる。
と私は考える。
2025.06.08 11:49
勉強嫌いの行政書士さん
(No.3)
参考条文
(期限の利益及びその放棄)
第136条 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

(相殺の要件等)
第505条 2人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 略

(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
第508条 時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。

(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第511条 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
2025.06.08 11:50
勉強嫌いの行政書士さん
(No.4)
指摘・補足がありましたら、ご連絡をお願いします。
2025.06.08 11:51
てりてりさん
(No.5)
勉強嫌いの行政書士さんありがとうございます。
>第511条 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。

この場合は、差し押さえ前に取得した債権であれば、弁済期到来有無関係なく相殺可能ということでしょうか。

>2 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。

これは差し押さえ前の原因に基づくものの債権は、どのような例でしょうか。
2025.06.08 20:32
宅建女子さん
(No.6)
>この場合は、差し押さえ前に取得した債権であれば、弁済期到来有無関係なく相殺可能ということでしょうか。

以下は、法律事務所から引用です。
長いので結論だけ。

−−−
最判昭和39年12月23日 は、双方の債権が弁済期未到来である場合について、自働債権の弁済期が先に到来する場合は、第三債務者は相殺ができるが、受働債権の弁済期が先に登載する場合は相殺ができない

 中略

ところがその後最高裁は昭和45年6月24日判決 により、自働債権と受働債権の弁済期の前後を問わず相殺を認め、また相殺予約の効力も無制限に認める判示をし、前述の最判昭和39年12月23日を判例変更しました。
−−−

判決の変化により、検討の余地はあるようですが、弁済期を問わないというのが有力です。

ただ、今回の設問は弁済期が8/31の貸付金債権です。
また、家賃の支払期限は毎月末です。
差押えられたからといって早く払う必要はないです、債務者には期限の利益があるので。
なのでそれぞれの弁済期限は同日になります。
差し押さえが早いけど支払期限は同じなので相殺できる、これが出題の意図だと思います。


>差し押さえ前の原因に基づくものの債権

敷金返還請求などは典型ではないでしょうか。
2025.06.09 09:15
てりてりさん
(No.7)
宅建女子さんありがとうございます。
>差し押さえが早いけど支払期限は同じなので相殺できる、これが出題の意図だと思います。
>弁済期を問わないというのが有力です。
賃料債権が、月末ではなかったとしても相殺は可能ということでしょうか。
2025.06.09 15:49
宅建女子さん
(No.8)
>賃料債権が、月末ではなかったとしても相殺は可能ということでしょうか。

可能性は高いけど、この設問はそこを論点にはしていません。
私は他に国税庁のコラムなども確認しています。
その上で「判決の変化により、検討の余地はあるようですが、弁済期を問わないというのが有力です。」とコメントしました。
弁護士も国税庁も時期は問わない説が有力としながらも明言していないんです。
そのような論点をこんなところで素人が論じる意味はありませんし、宅建の試験でそんな結論の明確でないものは出題されません。
それよりもこの設問は、月末相殺できることを読み取れるかどうかの方が大事です。
2025.06.09 16:50
てりてりさん
(No.9)
なるほど、設問では差し押さえ前の債権か、差し押さえ後かを判断できたら良いということですね。ありがとうございます。
2025.06.09 19:20

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