宅建試験過去問題 平成28年試験 問12

問12

AはBと、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間3年、賃料月額20万円と定めて賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した。この場合における次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. AもBも相手方に対し、本件契約の期間満了前に何らの通知もしなかった場合、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。
  2. BがAに対し、本件契約の解約を申し入れる場合、甲建物の明渡しの条件として、一定額以上の財産上の給付を申し出たときは、Bの解約の申入れに正当事由があるとみなされる。
  3. 甲建物の適法な転借人であるCが、Bの同意を得て甲建物に造作を付加した場合、期間満了により本件契約が終了するときは、CはBに対してその造作を時価で買い取るよう請求することができる。
  4. 本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借で、契約の更新がない旨を定めた場合でも、BはAに対し、同条所定の通知期間内に、期間満了により本件契約が終了する旨の通知をしなければ、期間3年での終了をAに対抗することができない。

正解 2

問題難易度
肢112.1%
肢264.3%
肢311.0%
肢412.6%

解説

  1. 正しい。期間の定めのある建物賃貸借では、当事者が期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新しない旨の通知をしなかった場合、従前の契約と同一の条件(期間は定めがないもの)で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。よって、AもBも更新しない旨を通知しなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされ、その期間は定めがないものとなります。
    建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
  2. [誤り]。建物の賃貸借における正当事由に該当するかどうかは、下記5つすべてを総合的に考慮して判断されます。
    1. 貸主および借主が建物の使用を必要とする事情
    2. 建物の賃貸借に関する従前の経過
    3. 建物の利用状況
    4. 建物の現況
    5. 立退料の提供の申し出
    一定額以上の財産上の給付(立退料)は、①~④の事由を補充するものであり、立退料の提供を申し出があったとしても正当事由があるとみなされるとは限りません(借地借家法28条最判昭46.6.17)。
    建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
    家屋の賃貸人が解約申入に際し、賃借人の家屋明渡により被る移転費用その他の損失を補償するため、いわゆる立退料等の名目による金員を提供すべき旨申し出で、右金員の支払と引換に家屋を明渡すことを求めたときは、そのことも、他の諸事情と相互に補完し合つて解約申入の正当事由を構成するものと解すべきである。
  3. 正しい。建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了によって終了するときは、賃貸人の同意を得て建物に取り付けた造作を、賃貸人に対して時価で買い取るよう請求することができます。転貸借の場合でも、転借人は賃貸人に対して請求することができます(借地借家法33条)。
    建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
    2 前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。
  4. 正しい。期間が1年以上である定期建物賃貸借契約の場合、賃貸人は、賃借人に対して契約の期間満了の1年前から6ヶ月前までに、賃貸借が終了する旨の通知をする必要があります。この通知を怠った場合、契約終了を賃借人に対抗することができません(借地借家法38条6項)。
    第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
したがって誤っている記述は[2]です。