宅建試験過去問題 平成21年試験 問2

問2

AがA所有の土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. Bが自らを「売主Aの代理人B」ではなく、「売主B」と表示して、買主Cとの間で売買契約を締結した場合には、Bは売主Aの代理人として契約しているとCが知っていても、売買契約はBC間に成立する。
  2. Bが自らを「売主Aの代理人B」と表示して買主Dとの間で締結した売買契約について、Bが未成年であったとしても、AはBが未成年であることを理由に取り消すことはできない。
  3. Bは、自らが選任及び監督するのであれば、Aの意向にかかわらず、いつでもEを復代理人として選任して売買契約を締結させることができる。
  4. Bは、Aに損失が発生しないのであれば、Aの意向にかかわらず、買主Fの代理人にもなって、売買契約を締結することができる。

正解 2

問題難易度
肢110.1%
肢278.7%
肢36.9%
肢44.3%

解説

  1. 誤り。買主Cが、Bが売主Aの代理人と知っていた場合には有効な代理行為となり、売買契約はAC間で成立します。
    代理行為が成立するためには、代理人が本人のためにすることを示す必要があります(顕名主義)。代理人が本人のためにすることを示さないで意思表示をした場合は、代理人自身のためにしたものとなります。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、この限りではありません(民法100条)。
    代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
    CがBの代理人であることをAに告げていなくても、Aがその旨を知っていれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。H17-3-ア
    Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、売主はBであることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。H13-8-1
  2. [正しい]。未成年者などの制限行為能力者が代理人になることは可能ですが、制限行為能力者を代理人に選んだ本人は、代理人が制限行為能力者であることを理由として代理行為を取り消すことはできません(民法102条)。したがって、Aは代理人Bが未成年であることを理由として契約を解除することはできません。制限行為能力者をあえて代理人として選んだ本人には落ち度があるため、取引の安全が優先されます。
    制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
    AがBに代理権を授与するより前にBが補助開始の審判を受けていた場合、Bは有効に代理権を取得することができない。H30-2-2
    未成年が代理人となって締結した契約の効果は、当該行為を行うにつき当該未成年者の法定代理人による同意がなければ、有効に本人に帰属しない。H24-2-1
    17歳であるBがAの代理人として甲土地をCに売却した後で、Bが17歳であることをCが知った場合には、CはBが未成年者であることを理由に売買契約を取り消すことができる。H22-2-3
    Bが未成年者であるとき、Bは、Aの代理人になることができない。H12-1-1
  3. 誤り。本肢は「Aの意向にかかわらず」としている点が誤りです。任意代理人が復代理人を選任することができるのは、①本人の許諾があるとき、②やむを得ない事由があるときに限られます(民法104条)。
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    委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
    委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。H29-1-2
    Bは、やむを得ない事由があるときは、Aの許諾を得なくとも、復代理人を選任することができる。H19-2-1
    Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなければ、さらにEを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。H13-8-4
    Bは、自己の責任により、自由に復代理人を選任することができる。H12-1-2
  4. 誤り。本肢は「Aの意向にかかわらず」としている点が誤りです。本人の許諾があるときと債務の履行をするときを除き、原則として双方代理はできません(民法108条1項)。損失の発生の有無は無関係です。
    同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
    BがCの代理人も引き受け、AC双方の代理人として甲土地に係るAC間の売買契約を締結した場合、Aに損害が発生しなければ、Bの代理行為は無権代理とはみなされない。R2⑫-2-2
    BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。H30-2-3
    不動産の売買契約に関して、同一人物が売主及び買主の双方の代理人となった場合であっても、売主及び買主の双方があらかじめ承諾をしているときには、当該売買契約の効果は両当事者に有効に帰属する。H24-2-3
    Aが甲土地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、AがCの代理人となってBC間の売買契約を締結したときは、Cは甲土地の所有権を当然に取得する。H20-3-2
    Bは、Aの同意がなければ、この土地の買主になることができない。H12-1-3
したがって正しい記述は[2]です。