宅建試験過去問題 平成19年試験 問6

問6

不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。
  1. 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該取消後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
  2. 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約を適法に解除した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
  3. 甲不動産につき兄と弟が各自2分の1の共有持分で共同相続した後に、兄が弟に断ることなく単独で所有権を相続取得した旨の登記をした場合、弟は、その共同相続の登記をしなければ、共同相続後に甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に自己の持分権を対抗できない。
  4. 取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。

正解 3

問題難易度
肢16.2%
肢28.6%
肢369.9%
肢415.3%

解説

  1. 正しい。取消し後に登場した第三者と取消権者は対抗関係に立つため、売主は、所有権移転登記の抹消をしなければ第三者に所有権を対抗できません(大判昭17.9.30)。
  2. 正しい。契約解除後に登場した第三者と売主は対抗関係に立つため、その旨の登記を備えなければ第三者に所有権を対抗できません(最判昭35.11.29)。
    不動産売買契約が解除され、その所有権が売主に復帰した場合、売主はその旨の登記を経由しなければ、たまたま右不動産に予告登記がなされていても、契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できない。
  3. [誤り]。共同相続した相続人の1人が自己の相続分だと偽って単独で所有権の登記を備えた場合でも、他の相続人は、法定相続分までは登記なくして第三者に自己の持分権を主張できます(最判昭38.2.22民法899条の2第1項)。兄が行った相続登記のうち、弟の共有持分については無権利であり実質的有効要件を欠くので無効です。登記には公信力がありませんから、その登記を信じて取得した第三者も権利を取得できないという理屈です。よって、弟は自己の法定相続分を限度に第三者に持分権を対抗できます。
    甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。
    相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
  4. 正しい。時効取得者と時効完成後に登場した第三者は対抗関係に立ちますので、その旨の登記を備えなければ第三者に所有権を対抗できません(最判昭33.8.28)。
    時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。
したがって誤っている記述は[3]です。