宅建試験過去問題 平成14年試験 問11
問11
Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為をし、A、B、C及びDが、Eに対し損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。- Aは、Eに対するBとDの加害割合が6対4である場合は、Eの損害全額の賠償請求に対して、損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。
- Aが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
- Aは、Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Bに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
- Dが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Aに対し、Aの負担部分の限度で求償することができる。
広告
正解 1
問題難易度
肢157.4%
肢28.7%
肢315.3%
肢418.6%
肢28.7%
肢315.3%
肢418.6%
分野
科目:1 - 権利関係細目:11 - 不法行為・事務管理
解説
- [誤り]。本問のような共同不法行為があった場合、その損害賠償責任は各人が連帯して負います(民法719条1項)。また、不法行為は業務執行に当たり生じたものですので、加害者の使用者であるAとCも連帯して責任を負います(民法715条1項)。
連帯債務と同様に、債権者は連帯債務者の1人に対して全額を請求することができるので、加害割合を問わず、AはEからの損害全額の請求を拒むことはできません。その後、Aは他の者に対して求償できます。数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
Aは、Cに対して事故によって受けたCの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができる。(H25-9-1)事故によって損害を受けたCは、AとBに対して損害賠償を請求することはできるが、Dに対して損害賠償を請求することはできない。(H25-9-3)加害者数人が、共同不法行為として民法第719条により各自連帯して損害賠償の責任を負う場合、その1人に対する履行の請求は、他の加害者に対してはその効力を有しない。(H19-5-3)不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。(H12-8-2) - 正しい。加害者の使用人が、その負担部分を超えて損害を賠償したときは、その負担部分を超える部分につき、他方の加害者の使用者に対して求償できます(最判平3.10.25)。
よって、Bの使用者であるAは、Dの使用者であるCに対して求償できます。共同不法行為の加害者の各使用者が使用者責任を負う場合において、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、他方の加害者の使用者に対し、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分の限度で、求償することができる。
- 正しい。加害者の使用者が、加害者たる被用者に対して求償することは可能です(民法715条3項)。ただし、本肢の記述のように全額を求償できるわけではなく、事実関係を考慮した上で信義則上相当と認められる金額までしか求償できません(最判昭51.7.8)。
前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
…使用者が業務上車両を多数保有しながら対物賠償責任保険及び車両保険に加入せず、また、右事故は被用者が特命により臨時的に乗務中生じたものであり、被用者の勤務成績は普通以上である等判示の事実関係のもとでは、使用者は、信義則上、右損害のうち四分の一を限度として、被用者に対し、賠償及び求償を請求しうるにすぎない。
Cは、使用者責任に基づき、Bに対して本件事故から生じた損害を賠償した場合、Dに対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。(H28-7-ウ)Aは、Dに対して事故によって受けたDの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、被用者であるBに対して求償権を行使することはできない。(H25-9-2)Aの使用者責任が認められてCに対して損害を賠償した場合には、AはBに対して求償することができるので、Bに資力があれば、最終的にはAはCに対して賠償した損害額の全額を常にBから回収することができる。(H24-9-3)Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合、A自身は不法行為を行っていない以上、Aは負担した損害額の2分の1をBに対して求償できる。(H18-11-4) - 正しい。加害者および加害者の使用者は共同不法行為者となり、連帯して責任を負います。連帯債務では、連帯債務者の一人が弁済をし、共同の免責を得たときは、その連帯債務者は他の連帯債務者に求償できるので、被用者Dは他方の使用者Aに対して求償できます。
広告
広告