賃貸借契約 (全15問中15問目)

No.15

Aは、BからB所有の建物を賃借し、特段の定めをすることなく、敷金として50万円をBに交付した。この場合のAのBに対する敷金返還請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成13年試験 問9
  1. 賃貸借契約期間中でも、Bの返済能力に客観的な不安が生じた場合は、Aは、賃料支払債務と敷金返還請求権とを対当額にて相殺することができる。
  2. 敷金返還請求権は、賃貸借契約と不可分であり、Aは、Bの承諾があったとしても、これをAの債権者に対して担保提供することができない。
  3. 賃貸借契約が終了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、Aは、敷金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる。
  4. Bは、Aの、賃貸借契約終了時までの未払賃料については、敷金から控除できるが、契約終了後明渡しまでの期間の賃料相当損害額についても、敷金から控除できる。

正解 4

問題難易度
肢111.3%
肢218.2%
肢311.8%
肢458.7%

解説

  1. 誤り。賃貸借期間中に、借主側から敷金と賃料を相殺するように求めることはできません(民法622条の2第2項)。敷金契約は賃貸借契約とは別個の契約であり、敷金返還請求権は建物の明渡し後に生じるからです。
    賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
  2. 誤り。敷金契約と賃貸借契約は別個の契約となります。敷金返還請求権は債権ですから、賃貸借契約において禁止されていなければ、債権一般の原則通り譲渡や担保提供(質入れ)も可能です。また差押えの対象となることもあります。
  3. 誤り。建物明渡債務と敷金返還債務は同時履行の関係になく、建物明渡が先履行債務となります。よって、同時履行とする特約がない限り、敷金返還がないことを理由に建物の明渡しを拒むことはできません(最判昭49.9.2)。
    家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のないかぎり、同時履行の関係に立たない。
  4. [正しい]。敷金は「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」です。担保されるのは賃貸借契約から生じる一切の債務となります(民法622条の2第1項最判昭48.2.2)。よって、賃貸借契約期間中の未払賃料や原状回復費用だけでなく、契約終了後明渡しまでの賃料相当損害額も敷金から控除することが可能です。
    …敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。…
    家屋賃貸借における敷金は、賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当額の損害金債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得する一切の債権を担保するものであり、敷金返還請求権は、賃貸借終了後家屋明渡完了の時においてそれまでに生じた右被担保債権を控除しなお残額がある場合に、その残額につき具体的に発生するものと解すべきである。
したがって正しい記述は[4]です。